事業承継補助金申請

事業承継にあたって補助金はないの?

と感じる方が多いかと思いますが、そのものずばり「事業承継補助金」というものがあります。

これは(M&Aも含む)事業承継にあたって経営革新を行う事業者に経費の一部を補助するものです。

このページではこの「事業承継補助金」について詳しく解説していきたいと思います。

 

※以下、特に断りの無い場合は「令和元年度補正 事業承継補助金」の情報となります。

 2020年6月5日をもって、「令和元年度補正 事業承継補助金」は締め切りとなりました。
 事業承継補助金を申請する際は、認定経営革新等支援機関による確認が必要となります。ご希望の方はこちらからお問い合わせ下さい。弊社は事業譲渡によるM&Aの経験があることに加え事業承継マネージャーとして認定されており、事業承継に関する豊富な知見を有しております。

目次

対象となる事業承継のケース

対象となる事業承継のケースは、

  1. 経営者の交代による事業承継(後継者承継支援型:「Ⅰ型」)
  2. M&Aによる事業承継(事業再編・事業統合支援型:「Ⅱ型」)

となり、法人、個人事業主、いずれも申請が可能です。

事業承継ですので、原則的に承継者が補助対象者となります。

補助対象となる経費

また、補助対象となる経費は以下の通りとなっています。

事業費 人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料費、外注費、委託費
廃業費 廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費、移転・移設費用(Ⅱ型のみ計上可)

ただし、M&Aの費用については、仲介手数料やデューデリジェンス料も含め費用としては認められていません

補助対象事業

非常に重要なポイントなのですが、補助対象となるのは、経営者の交代や事業再編・事業統合を契機とした承継者が行う経営革新等に係る取り組みです。

この取り組みが、認定経営革新等支援機関によって確認される必要があります。

具体的には以下のような取り組みとなります。

  1. 新商品の開発又は生産
  2. 新役務の開発又は提供
  3. 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
  4. 役務の新たな提供の方式の導入
  5. 事業転換による新分野への進出
  6. 上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組等

単純に事業承継で移転、廃棄するから補助金を下さいでは駄目と言うことですね。

補助率と補助金額

補助率と補助金額は以下の通りです。

ポイントは、事業転換による「廃業登記費」や「解体・処分費」、「原状回復費及び移転・移設費」が上乗せされるという点です。

これは、「原則枠」と「ベンチャー型事業承継枠、生産性向上枠」で金額と補助率が異なりますので、注意が必要です。

原則枠

まずは原則枠です。

タイプ 補助率 補助上限額 上乗せ額
Ⅰ型 1/2以内 225万円 +225万円
Ⅱ型 1/2以内 450万円 +450万円

つまり、Ⅰ型の場合は上乗せ額を含めて775万円(550万円+225万円)までの予算編成が可能となります。言うまでもありませんが、持ち出しは225万円となります。

Ⅱ型の場合は、上乗せ額を含めると1350万円(900万円+450万円)までの予算となります。

なお、補助金の交付は清算払いですから、資金繰りには使えません。事業を実施するにあたっては別途資金調達が必要となりますので注意が必要です。

ベンチャー型事業承継枠、生産性向上枠

生産性向上枠とは、当補助金の申請と同じ内容で先端設備等導入計画経営革新計画いずれかの認定を受けている場合を指しています。

ベンチャー型事業承継枠とは、要約すると新商品・新サービス開発新分野への事業展開に加えて、雇用の増加が認められることが要件となります。

タイプ 補助率 補助上限額 上乗せ額
Ⅰ型 2/3以内 300万円 +300万円
Ⅱ型 2/3以内 600万円 +600万円

つまり、Ⅰ型の場合は上乗せ額を含めて750万円(450万円+300万円)までの予算編成が可能となります。言うまでもありませんが、持ち出しは150万円となります。

Ⅱ型の場合は、上乗せ額を含めると1500万円(900万円+600万円)までの予算となります。

なお、この枠に認定される要件として経営革新計画がありますが、基本的な考え方は当補助金の申請と殆ど同じであるため、実務上は認定を受けておくことをお勧めしています。

補助対象となるのかチェックリスト

以下、全ての項目にチェックが付く必要があります。

基本的な要件

項目 チェック
中小企業基本法第2条に準じた中小企業者であるか
2017年4月1日から補助対象事業期間完了日または、2020年12月31日のいずれか早い日までに、事業の引き継ぎを行った又は行うこと。

事業承継形態に関するチェック

以下の何れかの事業承継形態であることが要件となります。

承継者 承継の形態 非承継者 チェック
個人事業主 事業譲渡 法人
個人事業主
株式譲渡 法人
同一法人 代表者の交代 同一法人
法人 M&A(吸収合併、株式譲渡、事業譲渡等) 法人
法人 事業譲渡 個人事業主

ただし、個人事業主から法人に事業譲渡する場合、法人の経営者が実質的に当個人事業主と同一人物だった場合は申請の対象となりません。※一定の要件を満たしていれば可能。

承継者の代表者の代表権の有無

承継者の代表者はいずれのケースに当てはまる必要があります。

代表権の有無 代表権に代わる要件 チェック
あり
なし 経営経験を有している(事業)者
同業種での実務経験などを有している(事業)者
創業・承継に関する下記の研修等を受講した(事業)者

加点要素

以下の場合は審査において加点されますので、事前に用意しておくことをお勧めします。

  1. 債権者調整プロセスを経て、各プロセスの支援基準を満たした債権放棄等の抜本的な金融支援を含む事業再生計画を策定した場合、それを証する書類
  2. 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていることがわかる書類
  3. 経営力向上計画の認定を受けている場合は認定書及び申請書類、経営革新計画の承認書(計画期間の表示がない場合は計画期間が分かる書類を追加)
  4. 申請者の所在する市区町村及び近接する市区町村地域への売上規模、又は申請者の所在する市区町村及び近接する市区町村以外の地域への売上規模がわかる資料等
  5. 地域おこし協力隊員の身分証明書

1については、ケースが限定的となると思われますが、2~5については用意しようと思えば用意が可能です。実務的には経営力向上計画を取得することも多いです。

また、2については顧問税理士先生に依頼することになります。日本税理士会連合会では「中小企業の会計に関する指針の適用に関するチェックリスト」を用意していますので、出せないことはないと思います。

3~4は文言そのままですので、説明は省略します。いずれにせよ上記の項目は、適正な経営管理がなされているか、地域にとって有用な事業をおこなっているという観点の加点項目になります。今後の経営を考える上でも決して無駄ではありませんので、用意することをお勧めします。

 事業承継補助金を申請する際は、認定経営革新等支援機関による確認が必要となります。ご希望の方はこちらからお問い合わせ下さい。弊社は事業譲渡によるM&Aの経験があることに加え事業承継マネージャーとして認定されており、事業承継に関する豊富な知見を有しております。