債務者区分は融資にどう影響するの?

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「今までは必要な時いつでも融資してくれた銀行が、二期連続赤字になった途端急に冷たくなり、融資をしてくれなくなった」「決算内容が良ければ銀行は融資してくれるが、赤字企業にはなかなか貸してくれない。」ではなぜ赤字企業には融資してくれないのでしょうか?

これは前出の記事「債務者区分とは~銀行の自己査定」の冒頭部分です。

銀行が融資(自己の保有する債権)をデフォルトリスクで区分けし、その区分けに応じた貸倒引当金を積み増す一連の作業が自己査定、 自己査定の作業で取引先=債務者を区分するのが信用格付、信用格付で判定された債務者の区分(ランク)が債務者区分と説明をしてきましたが、債務者区分が影響を及ぼす例として冒頭部分を引用しました。二期連続になったから融資してくれなくなった。ではなぜ銀行は急に冷たくなったのか?その答えは「信用格付で判定された債務者区分が下がったから」です。

今回は債務者区分が何に、どのように影響するのか?について説明していきます。

目次

債務者区分はどのように影響するのか?

債務者区分は何に、どのように影響するのか?以下の通り順番に説明していきます。

<債務者区分が影響する3つのこと>

  • 「今後も付き合うか?別れるか?」~取引方針に影響する
  • 「貸すか?貸さないか?」~融資姿勢に影響する
  • 「いくらまで貸すか?」「何%で貸すか?」~融資条件に影響する

今後も付き合うか?別れるか?~取引方針に影響する

銀行では債務者(顧客)を取引先とも言います。取引先に対する基本的な考えは「取引方針」と呼ばれ融資取引をしていくうえで最も重要です。要するに「この会社とどうやって付き合って行く(取引する)かという基本方針」になります。取引方針は債務者区分により決められています。

「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」とは今後も付き合っていくことができますが、「実質破綻先」「破綻先」とは別れる、つまり取引を解消することが専決となり、できるだけ銀行の損失が少なくなるにはどうやって取引を解消すれば良いか?が最大の課題となります。

前項「債務者区分とは?~あなたの会社はどの区分?」で説明しましたが実質破綻先と破綻先は企業としては活動を停止しているわけで(隠語で「死んでいる」などとも言います)そのような会社とは融資取引できないのです。

実質破綻先は「破綻」という文字はありますが、取引自体は続けていけます。(その理由は次項で詳しく説明します)

貸すか?貸さないか?~融資姿勢に影響する

取引を継続するといっても、それがすべて「貸す」ことにはなりません。

具体的にいうと正常先と要注意先には融資しますが、破綻懸念先には融資しないのが一般的です。

破綻懸念先は文字通り破綻が懸念されるのですから、新規融資は原則不可能です。二期連続債務超過はこの破綻懸念先に該当しますが、資産より債務が超過している、つまり今会社を解散したと仮定すると財産を処分しても借金だけが残る状態ですので、新規融資をしても赤字補填にまわってしまう可能性が高いからです。

破綻懸念先は銀行取引を継続するといってもただ返済を続けていくだけしかできません。酷な表現ですが「飼い殺し」のような状態と言えます。(銀行は悪意をもってそうするわけではないので、飼い殺しもふさわしい表現とは言えませんが)

いくらまで貸すか?何%で貸すか?~融資条件に影響する

正常先と要注意先には新規融資が可能ですが、この2つは平等ではありません。それは「融資条件」が違うのです。いくらまで融資して良いか?(融資限度額)何%で融資するか?(適用金利)これら「融資条件」は債務者区分をもとにして決められます。債務者区分が上位(良い)ほど条件も良くなります。

銀行員は債務者のことを、会社名と債務者区分をセットにして覚えます。債務者区分がわかれば融資限度額や金利がわかるので営業活動をする時役に立つからです。

銀行内では

「(株)〇〇建設は・・・(債務者区分)だから10億円まで融資できる。金利は5年返済なら2%以下になるから売り込みやすいなあ」

「(有)▲▲商店は・・・(債務者区分)なので1億しか貸せない、金利も高くなってしまう」

といった具合に使われています。

まとめ

上記の例では債務者区分を「・・・」としましたが、債務者区分は銀行によってそれぞれ違うルールで表現します。

みずほ銀行を例にすると正常先を「A~D」更に「1~3」に分け「A1、D3」などと表現し、要注意先は「E1」「E2」と分類しています。このように銀行によりそれぞれ違っています。

それと同様、以前にも書いたことですが債務者区分は行内の極秘事項で、債務者に明かすことは絶対にありません。上記のように取引方針、融資姿勢、融資条件を左右する債務者区分を明かすのは銀行の手の内を明かすことになるからです。また破綻懸念、実質破綻などの呼び方は金融機関内部のみで使う言葉です。相手に債務者区分を明かすと「あなたの会社は破綻が懸念されています」と言っているようなもので、トラブルに発展する恐れもあるのです。

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