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資金繰り改善のための粗利益率改善策~製造原価低減

前回は粗利益改善の重要性と売上改善について述べましたが、今回は製造原価(率)の低減について述べたいと思います。

実際、売上を伸ばして資金繰りを改善するより、製造原価(率)を提言する方が速攻性が高いです。なぜなら、売上については、例えば単価を上げるといった場合、顧客との交渉が必要な業種においては、時間がかかったり、断られたりする可能性があります。

また、小売業など自社の判断で値段を決定できる業種の場合でも、市場より高い値段を設定してしまうと売れなくなってしまうといった影響が考えられます。

しかし、製造原価の場合はある程度自分たちで変えることができる「コントロール可能領域」であり、極端な話、明日からでも低減させることができます。

それでは、どのように製造原価が低減できるか、具体的な方法を考えていきましょう。

目次

実際ベースの製造原価を使用する

中小企業では、過去の標準原価テーブルを更新せずにそのまま使っているということが多く見られます。本来であれば機械の更新、材料費・経費の変動により”実際の製造原価”は変わっているはずですが、数十年に渡って、標準原価が更新されておらず、実際の製造原価との乖離が生じているのです。

結果として、実際の製造原価が以前より上昇していることで、昔ながらの値段設定では全く儲からない(粗利が取れない)・・・という状況になっています。

このような場合、値段を上げることが必要になります。※値段の上げ方は別記事にまとめていますのでそちらをご覧ください。

このように、”原価は売価に直結する”ということは覚えておいて下さい。まずは実際ベースの製造原価を把握し、その上で何の製品が儲かっていないのか、単価(値段)を上げるべき製品、撤退すべき製品は何かを検討しましょう。

製造原価を低減させる具体的方法

一口に原価と言っても業種によって様々ですが、一般的な製造業の場合、大きく分けると

  1. 労務費(給料、法定福利費、福利厚生費、賞与など)
  2. 外注加工費(派遣費用、外注費)
  3. 部品材料費
  4. 製造経費(消耗品、水道光熱費などの生産のためにかかった費用)

の4つに分別されます。

改善のステップ

改善の方法としては、まず金額の多寡に関わらず、必要なものとそうでないものを分ける事です。

  1. 固定費(売上の多寡にかかわらず一定の費用)と変動費(売上の多寡によって変わる費用)に分別
  2. 固定費の内、製造経費の科目について確認する。特に、通信費や諸会費、広告宣伝費、地代家賃、リース代、保守料は一度内訳を確認すべきです。
  3. 変動費の内、部品材料費の仕入原価について確認する。
  4. 固定費で一番削減効果があり、一番改善しづらい労務費を確認する。

広告宣伝費

ある会社であった内容としては、よく分からない宣伝サイトに月5万円を払っていたことです。結局、1年間契約し、即刻解約しました。ハッキリ言って効果はなく、付き合いで入ったようなものでしたが、それで年間60万円の粗利益が減少した事になります。例えば、粗利益率が20%の場合、月5万円の粗利益を生み出すためには売上が25万円必要(25万円×20%)となります。経費を削減する場合、こういった考え方をすると削減の効果がより分かりやすくて効果的です。

通信費

通信費もチェックしてください。固定電話やFAX回線は必要ですが、例えばひかり回線に切り替える事で、電話番号を変更せずに月額の料金を削減する事が可能です。また会社用の携帯やモバイルルーターなども、大手キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)以外の格安シムを契約し、本体のみ中古を購入する事で、毎月1台当たり数千円は削減可能となります。

リース代

最後にコピー機のリース代なども見直しの対象です。コピー機は本体と毎月のカウント料で料金が決定するはずですが、カウント料の単価は一度確認してください。白黒1枚~円、カラー1枚~円と設定されており、使用枚数が多いと馬鹿にならない金額になります。本体のリース残高があっても、引き受けてくれるメーカーもありますので、現状のメーカー以外に見積もりを依頼するのも手です。

といった様に、既に支出されている項目を見直すと、色々削減のアイデアは浮かんできます。

部品材料費の仕入原価

仕入原価は決まった取引先や商社などにより、概ね固定化されているのではないでしょうか。もちろん仕入先の見直しは必要ですが、そこで気を付けて頂きたいのが、仕入した材料の単価は安いが、それに付随する費用(付帯費用)がかかっていないかどうかを見極める必要があります。

例えば、仕入価格は安いが毎週1回高速を使って受取に行かなければならない、最低の発注ロットが100個で1年間の内に50個しか使わないために管理コストが発生している などの直接金額では見えづらい費用が発生していないかどうかを確認する必要があります。実はこれがやっかいで、一番の稼ぎ頭であった商品が、分析してみると間接コストがかかっており、実際はそうでもなかった といったケースも少なくありません。

労務費(一番改善しづらい)

労務費は一番削減効果が大きいと言えます。月給20万円の従業員を削減した場合、社会保険の会社負担分(私はいつも18%で計算)を合わせると、月23万円になり、年間にすると283万円の削減になります。その金額の経費を年間削減するとなると非常に大変ですが、従業員を削減すると、他の色々な部分に影響を及ぼしますので、これは最終手段です。

ただし確認すべき内容としては、不要な時間外労働や休日出勤をしていないかの分析は必要です。ただでさえ時間外は1.25倍になりますので、時間外が多いにも関わらず成果が上がっていない従業員に対しては注意を促す必要があります。その場合直接的に言うのも一つの手ですが、「働き方改革によって月45時間以上を超えた時間外労働は原則できなくなるので気を付けて。そういった従業員がいる会社はお上から注意をうけてしまうので、協力してください」といった感じで、法律のせいにして、ひたすら言い続けるようにします。

原価の削減はケチ臭い様に思われますが、少額でも削減金額の積み重ねが年間の利益につながる事を理解し、原価の見直しを行ってください

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