読んでおきたい
銀行に好かれるシンプルな資金繰り表の書き方

目次

資金繰り表はとても重要です

資金繰り表を作っているか否かで、銀行の印象は全く変わります。

それだけでなく、そもそも資金繰り表は自社の資金繰りを管理する上で極めて重要なものです。

事業が好調でも突発的に運転資金が不足するケースはいくらでも起こり得ます。

そういったケースを未然に防ぐためには、資金繰りの予測が重要となり、そのためには資金繰り表を作成することが有用です。

今回の記事では、資金繰り表の書き方を解説していきたいと思います。

資金繰り表とは

まず、資金繰り表とは何かをご説明します。分かっている方は次の段落まで飛ばして結構です。

多くの方が、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)に馴染みがあるかと思います。

これらは、会社の収益を確認するツールとして、非常に有用なものなのですが、大きな問題点があります。

それは、現金の流れが見えにくいということです。

PLとBSは発生主義で作られており、例えば、掛け取引で商品が売れた場合、売上高はその月のPLに反映され、入金されるであろうお金は売掛金としてその月のBSに記載されることになります。しかし、お金が実際に銀行口座に入金されるのは数ヵ月後になり、顧客ごとの取引条件によって1カ月月後から数か月後まで様々です。

商品を仕入れる場合は、こちらが数カ月後に支払う立場になります。商品はその月のBSに反映され、今後支払うべきお金は買掛金としてこれもその月のBSに記載されることになります。これも取引先との取引条件によって変わります。

更に、人件費、光熱費などは毎月固定的に支払われるものですが、これも基本は発生主義として、発生した月にPLやBSに計上されなくてはなりません。

このように、発生主義ではシンプルに売上や経費が発生した月に計上されるのですが、実際の入金や出金については、顧客ごとや経費によってバラバラのタイミングでそれぞれ発生するため、頭で把握することが非常に難しいのです。

上場企業では、専門の部署がキャッシュフロー計算書まで作成して株主に公開していますから、お金の流れは明白ですが、中小企業では、パート従業員に経理を任せていたり、自計化されていない(試算表などの作成を外部の税理士などに任せている)ことでPL・BSが2ヵ月後にならないと手に入らないなど、面倒なお金の流れから目を背けたくなる要素が満載です。

その結果、月末に口座が空になっていたり、最悪、黒字倒産もあり得ます。そうでなくても、慌てて銀行に駆け込むことになるでしょう。

この複雑で混乱する入金と出金のタイミングと金額を予めしっかりと把握しておきましょうというのが、資金繰り表の役割です。

そして、これが資金繰り表のフォーマットです。オーソドックスでシンプルなフォーマットですので、どこの銀行でも問題ないと思います。

分かっている方は飛ばして結構ですが、
資金繰り表のフォーマット

このフォーマットを元に、資金繰り表の書き方を説明していきたいと思います。

資金繰り表の書き方

月次で記述する

資金繰り表は、最低6ヵ月間の月次(月単位)で記述します。資金の出入りが激しい場合は、日次(日単位)で書くと流れがよく分かりますが、基本的には月次で書きます。この例では、「2018年1月」を「18/1」と”YY/M”の形式で記載しています。

収入の部

収入の部と支出の部は全て「現金主義」で記述します。簡単に言うとお小遣い帳で、難しく言うとキャッシュフローです。

収入の部は、売上高と消費税、家賃収入もあれば記入します。なお、定期積立の満期金も資金繰りプラス要因となります。

現金収入であれば発生した当月に記入しますが、掛け取引をしている場合は、入金月に記載することになります。
例えば、末締めの翌月末払いの場合、18/1に”発生”した売上高32,000は18/2の売上高に記入します。

支出の部

支出の部には、実際に引き落とし(もしくは現金支出)となるものを漏れなく記載します。

記載するものとしては、人件費、法定福利・福利厚生費、原材料費、外注費、水道光熱費、地代家賃、リース料、支払利息・割引料、その他経費など、毎月ほぼ変わらない経費(固定費)に加え、労働保険料(3カ月に1回)、預かり所得税など定期的に支出になるものや、一年に一度支出する経費についても忘れず記入する必要があります。

財務の部

最後に、財務の部です。銀行からの借入と返済を記入する必要があります。返済の部については、金融機関ごとに記入します。

ここまで記載すると、翌月繰越金が計算できます。これが次月の現預金になります。

資金繰り表作成のポイントまとめ

資金繰り表作成のポイントをまとめておきます。

  1. あくまで「現預金=お金」の過不足を見る
  2. 基本的には月単位で作成するが、仮に月内で資金繰りが圧迫している場合は、一日単位で作成してみると、会社の資金の流れがより詳細に分かる。
  3. 月末が土日祝日等で金融機関が休み場合、社会保険料の引き落としや金融機関への返済が翌月に繰り越される場合などがあるが、基本的にその月に出ていくお金として捉えて構わない(但し、売上も翌月に繰り越される場合などは注意が必要→金融機関によっては、売上入金より引き落としが先にかかってしまい、残高不足から引き落とし不可能と連絡が来る場合がある)
  4. 特定月に出るお金については、別途一覧表などを作り、資金繰りに反映させる(作成が面倒になってくると、特定月に支出するお金を見逃しがちになり、毎月の平均で支出をとらえがちになるが、例えば固定資産税や自動車税などは、特定月にしかでないため、そういった支出を正確にとらえる事で資金繰りの精度が上がる)
  5. 消費税について
    (1) 売上高に含まない場合は、支出の欄にも設けない(あくまで、資金繰りには使っていない)
    (2) 売上高に消費税を含む場合は、支出の欄にも支払消費税を設け、支出月に記入する
    消費税については、資金繰りに使用している企業も多いかと。資金繰りに使用している場合は、納税のタイミングまでには資金を準備しておかないといけないので、その点も加味して資金繰りを考える必要がある。
  6. 手形や電子債権について
    手形や電子債権は資金化になるまで2~4ヵ月程度かかるものだが、割引を活用すると申込後2~5日程度で資金化可能(割引手数料は引かれますが)。
    割引を活用する際の注意点として
    (1) 金融機関などによって申し込みから資金化までの期日が違うため、いざという時に使えない事を避けるため、事前に資金化までの期日を調べておく事
    (2) 上場企業や地元でも有力な企業、金融機関との取引良好な企業であれば、割引を断られるという事はないが、そうでない企業の手形や電子債権については、事前に金融機関に相談し、割引可能か割引率はいくらかなどを確認しておいたほうが良い
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