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粉飾は銀行に見抜かれている

粉飾は見抜かれます!

冒頭から過激な表現ですが、事業資金融資など銀行と付き合っていく過程で、必ず見抜かれますので粉飾をしてはいけません。数十年銀行に勤務し、数え切れないくらい決算書を見てきた銀行員の目はそこまで甘くありません。コンプライアンス・法令遵守が浸透している現在でも、残念ながら粉飾決算はなくなりません。そこで今回は、決算書と粉飾についてお話ししたいと思います。

幸いと言うべきか、私は某旅行会社のような詐欺事件に発展するほど重大な粉飾には出くわしたことがありませんが、そこまでいかなくても「これは粉飾と言われても反論できないですよね・・・」「粉飾、とまではいかないけれど、マズイですよ社長!」というケースは非常に多くあります。

今回は差し障りない範囲でこうした実例も交えて説明していきます。

粉飾決算とは?~節税ばかり考えた逆粉飾も「粉飾」です

粉飾決算(英語ではWindow dressing)は、不正な会計処理で虚偽(ウソ)の決算書を作ることです。典型的なやりかたとしては利益操作して損益計算書(P/L)の損益を意図的に書き換え、業績を良く見せる(赤字を黒字にするなど)ことや、貸借対照表(B/S)を操作して財政状態をより良く見せる(簿外債務の隠蔽など)ことなどがあります。

具体的には以下のようなことが粉飾決算に当たります。

  • 売上の水増し
  • 期末在庫の水増しによる、粗利益ねん出
  • 未払い残業代を計上しない

これらはいわゆる「二重帳簿」であり、税務署に提出する本物と銀行などに提出する偽物(詳細後述)が存在するということになります。

ちなみに、脱税(法人税、消費税など)の目的で決算内容を実態より悪く装うことを「逆粉飾」と呼びますが、これも広い意味で粉飾決算に含まれす。

悪質なケースでは、広告宣伝費など経費の架空計上、私的飲食費の接待交際費計上などが当たります。

なぜ粉飾決算をするのか?

赤字決算では信用が低下し、場合によっては取引相手の不安も招き、さらなる業績悪化の原因になりかねません。もちろん売上を増加させたり経費節減をしたりと企業努力で黒字化することが当然のことですが、業績悪化がひどい企業では理想、空想になってしまうこともあります。

その結果として、潔く廃業M&Aによる事業売却を選んだり、自己資金を限界まで投入してでも頑張っている会社は多く存在しています。一方、短絡的発想で粉飾決算に手を染めてしまう企業がいることも、悲しいことですが事実です。

そしてもうひとつ粉飾をする動機になっているのが、資金調達のためという理由です。

資金調達のためには銀行を誤魔化すしかない!

決算期のあと、融資取引がある金融機関に決算書を提出しなければいけません。新規に融資を受ける以外でも、毎年業績を確認しなければ金融機関取引は取引を継続してくれません。

万一理由もなく決算書の提出を拒んだなら、その時点で即刻全融資の返済を求められるでしょう。これは貸し剥がしではなく、顧客から集めた融資を健全な企業に融資し、利息とともに回収して満期に預金を返すという、銀行の「金融仲介機能」を維持するため銀行に義務づけられていることです。信頼の置けない企業には融資しませんし、信頼できなくなれば融資を回収しなければならないということです。

決算書を提出しないというのは極端な事例ですが、業況の悪化も上記の「信頼できなくなれば」という状態に近づくことを意味しています。「このまま業績悪化が続くと、この会社は危ない!」そう判断した場合、銀行は新規融資を渋り、または融資の期限が来ても期限延長(書替え)をせず返済を求めてくる場合があります。これも業績悪化で銀行が信頼できないと判断した結果なので貸し剥がしにはなりません。

「赤字では融資してくれなくなるから、粉飾して黒字の決算書を作り銀行を誤魔化すしかない!」

私が見た粉飾決算の動機はすべてこちらでした。

銀行は粉飾を必ず見抜きます!~見抜けないといけないから

金融機関、銀行という看板を掲げている以上、粉飾決算を銀行は必ず見抜けないといけません。そして、必ず見抜けるだけのノウハウ、経験の蓄積もあります。

もちろん事件になるような粉飾で、銀行が見抜けなかったケースもありますが、これは巧妙かつ悪意があり場合によっては、某住宅ローンで問題となった地銀のように人的要因(企業と銀行の癒着など)も作用するからです。

「私が見た粉飾決算」と書きましたが、これは上記に比べると幼稚(失礼ながら)です。銀行提出用と税務署提出用と2通の決算書が存在し、銀行提出用はもちろん粉飾され赤字が黒くなっていました。銀行はこの時点ですでに粉飾を見抜いていたのですが、決定的証拠もなく静観していました。するとある日銀行に税務署の調査が入り、粉飾決算が発覚しました。

ちなみに、税務調査は利益が出ている会社から税金を取るために行われるもの、つまり逆粉飾の調査ですから、粉飾決算はスルーされ、ちょっとしたもので追徴課税されておしまいというケースが多いようです。

このように、粉飾決算が税務署に指摘されるというのは、ある意味ラッキーなことです。

粉飾がバレるとどうなるのか?~まとめとして

粉飾決算は背任罪、詐欺罪など犯罪になる場合があります。また逆粉飾で脱税となれば追徴課税や、こちらも罪に問われることがあります(例えば、某青汁会社の社長については、法人税法違反で懲役2年執行猶予4年、会社に罰金4600万円が課されています)。

上記した私の経験談の場合、幸い脱税や犯罪に問われることはありませんでした。社長さんも心底反省し銀行に謝罪しました。銀行も取引解消にはしませんでした。ただし2度と新規融資をせず返済だけ継続させることになりました。そして、何年かしたあとその会社が結果的に破綻したと聞きました。銀行はウソを嫌います。そして銀行を誤魔化そうとした相手は決して許しません。

銀行にはそういう一面もあることをぜひ覚えておいてください。

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