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短期借入金と長期借入金はどう使い分ける?

今回、短期借入金長期借入金の上手な使い分けについて説明します。

  • 短期借入金と長期借入金の定義
  • 証書貸付や手形貸付など、どんな融資が当てはまるのか?
  • 両者の違いはどこか?

まずはこう言った基本事項から説明していきます。

目次

短期借入金、長期借入金とは?

 短期借入金とは文字通り短期の借入金です。

ここでいう短期長期とは、融資を返済するまでの時間の長短という意味です。

つまりお金を借りてから、すぐ返さなくてはいけないのか?それともゆっくり返済できるか?という区分になります。

短期借入金とは?

一般に、返済期間が1年以内の融資を短期借入金と呼んでいます。

短ければ数日から1年までが短期借入金となります。

参考

銀行で数値を表現する場合、「~まで」(以内)「~より上」(超)で区分けします。これは「~以上~以内」「~未満~以上」などでは区別がハッキリしないからです。

したがって短期の1年とは「1年まで」と1年も含まれ、長期は1年と1日以上ということになります。 

長期借入金とは?

 短期借入金とは逆に、返済期間が 1年を越える融資を長期借入金と呼びます。

短期借入金は1年までですが、長期借入金に制限は無く、理論的には50年でも100年でも融資することが可能です。

しかしながら、半世紀もの借入は現実的ではなく、一般に30年くらいまでとなっています。

融資にも短期長期の違いがある

証書貸付手形貸付など融資(融資商品、融資種類)も短期長期で分けられます。

ここでは融資の基本事項も合わせ説明します。

短期借入金の融資

 短期借入金で代表的なものは手形貸付と当座貸越です。

なお、手形割引も短期借入金に含まれるという解釈が一般的です。

売掛金を回収するなどで手持ちとなった手形を銀行に持ち込み、期日までの日数に応じた金利を差し引かれて(これが割引の意味)現金化できる手形割引は、手形の買取りとの解釈もあるなど、いわゆる融資とは趣がことなるので、今回は省きます。                               

手形貸付

 短期借入金は大半が手形貸付です。

借り入れする金額や返済期日などが記載された約束手形を用いる融資方法が手形貸付です。

参考までに、返済期日になったら全額返しますと約束した手形(約束手形)は、商取引で使われている手形と同じです。

形式上は一般の手形同様に、他社に譲渡したり、手形交換所に提示して支払いを請求したりすることもできますが、実際に行うそれを実行する銀行はありません。

ただし、延滞が長期化すると債権回収会社(サービサーと言います)に譲渡されることはあります。

当座貸越

あらかじめ5百万円など、一定の範囲(極度額、限度額と言います)を定めて、その範囲内なら自由に借入と返済ができる融資が当座貸越です。

銀行や消費者金融カードローンも当座貸越の一種です。

ちなみに、当座貸越の契約期間は2年〜5年の自動更新が多いことから、格付(銀行格付、信用格付)では長期借入金に分類されます。

長期借入金の融資種類

長期借入金の代表格は証書貸付です。

証書貸付

 借用金証書(正式には「金銭消費貸借契約証書」)を使った融資が証書貸付です。

長期借入金はほぼすべてが証書貸付です。

契約書類には借入する金額や借入利率、毎回の返済額や返済日などが記載されています。

ちなみに住宅ローンも証書貸付です。

事業資金融資も住宅ローンも、ともに金銭消費貸借契約証書を使用します。

短期借入金と長期借入金~資金使途の違い

資金使途によっては短期借入金、長期借入金両方に該当するものもありますが、ここでは短期、長期借入金で代表的な資金使途について解説します。

短期借入金の資金使途

短期借入金の資金使途で代表的なのは運転資金です。

なかでも経常運転資金(売上回収まで不足する運転資金の調達)が一般的です。

他にも賞与資金(ボーナス支給で一時的に調達)や季節資金(茶、魚介類など手に入れる時期が限定される品物の購入で調達)などがあります。

すべて企業活動における日常的なお金の使いみち(これが運転資金の意味です)で、原則として短期借入金の融資で調達します。

長期借入金の資金使途

 いっぽう長期借入金の資金使途として代表的なのが設備資金です。

工場の建設、生産ラインや機械など事業に必要不可欠な設備投資の資金調達であり、運転資金と違い、短期間の売上回収で返済できるものではありません。

設備とひとくちにいっても、事務所改修や従業員の福利厚生施設(例・企業内の託児所建設など)といったように、売上や利益に直結するものばかりではないため、企業の利益から長期に返済していくのが一般的です。

短期借入金のメリット、デメリット

短期借入金、長期借入金は呼び方が相反するのと同様、基本的にはどちらかのメリットはどちらかのデメリットになるといった関係になっています。

メリット①~金利が低い

 融資では、原則として借りる期間が長いほど金利も高くなります。

この点で、短期借入金は長期借入金より金利が低く抑えられる可能性があります。

ただし可能性があると表現したのは、金利とは債務者と貸手(金融機関)の相対で決まりますので、一概に短期だから低金利、長期だから高金利とは言い切れないからです。

メリット②~経費が抑えられる

 短期借入金は手形貸付を利用するケースが多いので、収入印紙代を長期より低く抑えることができます。

たとえば融資金額1千万円の収入印紙代(顧客が負担する)は手形貸付なら2,000円ですが、証書貸付では10,000円になります。

<国税庁/印紙税額一覧表

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm >

筆者注)上記一覧表で手形貸付は「約束手形または為替手形、500万円を超え1千万円以下」証書貸付は「消費貸借に関する契約書、500万円を超え1千万円以下」

デメリット①

短期借入金では返済期日が来ても再度同じ金額で借入を延長する(書換え、継続などと呼びます)ケースもあります。

しかしながら、業績の悪化などで銀行から書換えを拒まれることもあります。

長期借入金で返済期間5年であれば、言い換えると「5年でゆっくり返済する権利」を持っているとも表現できます。これを期限の利益と言いますが、短期借入金では返済期日までの短期間しか期限の利益がない点に注意が必要です。

長期借入金のメリット、デメリット

メリット①~期限の利益

 上記した期限の利益が長期借入金で最大のメリットです。企業の業績は浮き沈みもありますので、決算期毎に返済を求められるリスクがないという点が、長期借入金におけるメリットと言えます。

メリット②~長期運転資金なら汎用性がある

運転資金には短期借入金以外に、長期運転資金もあります。

長期運転資金の場合、返済期間も3年、5年、10年と長くなるので返済に余裕ができます。

また、長期運転資金の場合、原則として細かい使いみちまで指定されることはないため、汎用性が高いと言えます。

この点は、上手な使い分けの項でもう少し詳しく説明します。

デメリット①

 こちらは短期借入金と相反することで、金利や印紙代など経費がかかってしまうことがデメリットです。

金利や印紙代以外にも、信用保証協会を利用する場合の保証料(信用保証料)は、長期になるほど費用が多くなります。

長期借入金を利用する際には費用面も十分考える必要があります。

短期借入金と長期借入期の上手な使い分け

 上手な使い分け方法には、主に二つのポイントがあげられます。

上手な使い分けその1.返せるときに返す

短期借入金、長期借入金の双方に当てはまるのですが、返せるときに返すことが大事です。

特に短期運転資金では、業績に問題がない場合では、期日が来ると銀行のほうから継続しましょうと進めてきます。付き合いのことも考え、言われたままに継続すると、結局支払金利がかさんでしまうことになります。 

たとえば短期借入金は、本来期日まで借りて、期日が来たら返すのが原則です。返せるときに返しておけば、借入額が減るわけです。

また期日に返済しても、銀行からネガティブにとらえられることはありません。

上手な使い分けその2.銀行が欲しがっているモノを掴む

 上記で銀行との付き合いと述べましたが、ここが結構難しいところでもあります。

たとえば返せるときに返すといっても、次に借入が可能か?と心配になると、このまま借

り続けておくという考え方もあり、決して不正解ではありません。

 ところで銀行では、月末や半期末など融資を積極推進する時期があります。そういったときには融資を受けやすくなるのですが、資金的に必要でなくても「借りてください」と言われたときに、しかも銀行が求めているモノに応じてやれば銀行に感謝されます。

例えば長期運転資金を銀行が欲しているなら、本音では短期借入金で手形貸付、6か月だけで良いのに、5年の長期借入を利用してあげる選択肢もあるのです。

当然ですが、銀行から頭を下げ借りてくれと言われた融資は、多少業況が悪化しても冷たく返済しろとは言われないものです。

まとめ

 短期借入金、長期借入金はそれぞれの必要性、資金使途に応じて利用するものですが、銀行との付き合いで柔軟な対応をすることも大事です。

短期、長期借入金の上手な使い分けと同時に、銀行との上手な付き合い方も考えながら、融資の選択をしていきましょう。

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