読んでおきたい

事業資金融資は形態によって証書貸付、手形貸付、当座貸越などに区分されます。

これらはそれぞれその特徴や注意点などいくつも異なる点があり、今回一連の記事で説明していきます。

そしてもう一つの観点は「何の目的で使うのか?」という資金使途の点です。これは主に事業資金融資と個人ローンの2種類に分けられます。

事業資金でも、個人ローン(住宅ローンなど)でも最も多い契約形態が証書貸付です。

そこで今回は証書貸付の概要と特徴について、また証書貸付で銀行融資を受ける時の注意点についても説明していきます。

目次

証書貸付の特徴

正式な名前は金銭消費貸借契約証書と言います。銀行では金銭消費貸借契約証書を使って融資することを証書貸付と定義しています。そして契約書類である金銭消費貸借契約証書は、短縮して金消(きんしょう)契約、あるいは単に金消(きんしょう)と呼びます。ちなみに手形貸付は手(て)貸(がし)、当座貸越は当貸(とうがし)などと略して呼びます。

金銭消費貸借契約についてもう少し詳しく~使用貸借との違いも

証書貸付は、手形貸付と同じく消費貸借債権です。金銭消費貸借の定義としては「借りたお金を期日までに返済するのが消費貸借契約(正確には金銭消費貸借契約)と言い、手形貸付は金銭消費貸借契約がある債権(融資のこと)なので消費貸借債権と呼ばれます。ちなみに住宅ローンなどの証書貸付も契約書類は金銭消費貸借契約証書を使う消費貸借債権になります。」(手形貸付記事の説明より)

貸借とはモノの貸し借りのことです。消費貸借はモノを借りてそれを自分で使い(消費)、あとから借りたモノと同じ種類のモノを返す契約です。証書貸付も手形貸付もお金(金銭)を借りて自分で使い(消費)、あとからお金で返していくので金銭消費貸借契約となるわけです。

これに対し、自分で使ったあとで、借りたモノそのものを返す契約を単に使用貸借(または単に貸借)と言います。

使用貸借と消費貸借の違いを住宅ローンで説明すると、銀行から金銭を借りて家を建てるために消費し、あとから借りた金銭を返済する住宅ローンは金銭消費貸借契約です。

そして、父親名義の土地を父親から借りて(使用貸借)して家を建てるけれど、家がなくなれば土地というモノをそのまま返すので、こちらは使用貸借になります。(ちなみに、実際に返すかどうか?は問題にはなりません)

証書貸付の特徴その1.証書貸付は長期の融資

銀行融資では1年未満で返済する融資は短期、1年以上の融資は長期と区別しています。

長期借入は証書貸付で契約し、短期は手形貸付や当座貸越の契約となるのが一般的です。

住宅ローンは最長35年、事業資金融資でも運転資金なら3年から5年、設備資金なら10年以上の分割返済が一般的なので、契約はすべて証書貸付となります。

(なお同じローンという名称でも、カードローンは当座貸越に分類されます)

証書貸付の特徴その2.借りたら、あとは返していくだけ

証書貸付で最大の特徴は「借りたら、返していくだけ」という点です。

例えば住宅ローンを借りて自宅を建てたら、あとは毎月返済していくだけです。原則として追加融資を受けることはできません。もちろんリフォームやソーラー発電設備が必要になった場合は、あらたにリフォームローンなどの融資を申込まなくてはならず、最初の住宅ローンに上乗せはできません。(資金使途や銀行対応によっては例外もあります)

これは事業資金融資も同じで、新しくお金が必要になった場合には別の証書貸付で融資を受けるのが一般的です(ケースによっては、返済中の証書貸付に増額し借り直す方法も)

このように「借りたら、返していくだけ」というのが重要な点です。

銀行にとっては融資が毎月確実に回収されるという大前提があるので、長期で融資することが可能になっています。ですから、もしもあとから融資を上乗せしたり、カードローンのように借入と返済が自由だったりすると、融資がいつまでも回収できなくなってしまいます。

あくまで確実に減っていくからこそ長期で、また住宅ローンのように低金利でも融資できるのが証書貸付の特徴です。

これに反するような場合は注意が必要になりますので、次項で説明します。

証書貸付の注意点~延滞には要注意!

繰り返しになりますが、長期間融資してもらえる証書貸付では確実に減っていく点を重視しています。ですから返済が延滞すると、銀行では非常にネガティブに受け止めます。

当日入金しても延滞になる?

たとえば返済日の昼頃に、返済金を入金する人もいると思いますが、実はこれも延滞になります!銀行では当日延滞と呼び、これも延滞の一種として記録されていきます。

証書貸付では、返済日当日にコンピューターが預金口座から自動的に引き落とします。ところがこの「当日」とは、理論的には日付が変わった瞬間、つまり当日の深夜0時というのが一般的です。ですから返済日当日の、銀行が開店する時間になってもまだ入金されていない人は延滞していることになってしまいます。

銀行から連絡が来るのは延滞しているから

もちろん当日に入金する人がいるということは銀行も承知しています。しかし金融庁など監督官庁からは「銀行は延滞が重なり破綻する人が増えないように目を光らせ、延滞した場合はすみやかに返済するように連絡すること」という趣旨の指導があります。

したがって当日の夕方近くまで入金しないでいると、銀行から連絡がくることもあります。

「当日中に入金すれば延滞にはならないのに」

「仕事が忙しくて夕方入金するつもりだったのに」

といった苦情に発展する恐れもあるので、銀行も慎重に連絡するようにしていますが、上記のように、あくまで延滞は延滞と捉えられますので注意してください。

まとめ

証書貸付では返済が滞ること、返済できなくなることがもっともマズイ自体であることは一般の人でも理解できるでしょう。しかし、この当日延滞は意外と知られていないものですので、ぜひ覚えておいてください。

当日中に入金になれば、次の日には延滞の記録も消えます。

しかし「返済当日に入金がなかった」という事実は個人信用情報にも記録が残ります。

銀行では融資審査で個人信用情報のこういった記録は必ずチェックします。

そして長期で延滞した場合は異動が登録され(いわゆるブラックリストに乗るという状態)事業資金融資審査ではまず審査落ちになってしまいます。そして当日延滞が繰り返されている人も、審査にマイナス影響する可能性がありますので注意が必要です。

証書貸付は長期で返済していくものだからこそ、延滞しないよう前日までに入金することをぜひ覚えておいてください。

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