新型コロナウイルス・実質無利子融資制度について説明します。
既に以下の広告を見たことがある事業者様や実際に取引先の銀行で申し込んだ事業者様もいると思いますが、良く分からない点が多いようですので、このページで詳しく説明することにしました。
”実質”と言う部分がポイントであり、また注意すべき点でもあります。
この記事では、実質無利子融資制度の概要を説明し、次に要点を3つ
- 補助金ではなく融資、だから返済しなければいけない
- 返せないとき、融資残金と利子はどうなるのか?
- 返せなくなって、そのあとどうなるのか?
以上説明しますので、参考にして下さい。
目次
実質無利子融資制度とは何か?
まず政府の説明をご覧下さい。
日本政策金融公庫や商工中金の新型コロナ感染症特別貸付などに加えて、 民間金融機関でもご支援できます(中略)
「民間金融機関でも実質無利子無担保据置が最大5年間」
「民間金融機関による信用保証付融資の保証料が半額又はゼロに」
「借り換えも保証料ゼロ 金利負担実質ゼロに」
<引用 経済産業省/中小企業庁パンフレット「新型コロナウイルス感染症で資金繰りにご不安を感じている事業者の皆様へ」
実質無利子融資とは、本来は日本政策金融公庫や商工中金による公的融資「新型コロナ感染症特別貸付」で、一定の条件下で無利子の融資が受けられることを指します。
しかし、コロナウイルスが深刻化し、公的融資だけでは対応しきれなくなり、信用保証協会融資を利用して民間金融機関でも実質無利子融資を補完的に利用可能にした制度です。
要は「公的融資では、資金量も融資への対応も間に合わないので、銀行でも無利子融資ができるようにした」ということです。
実質無利子融資とは?
では、実質無利子融資についてポイントを並べ簡潔に説明していきます。
- 正式には「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」
- 国の財源から各都府県が当初3年間の利子と信用保証料を補助する制度融資
- 無利子は3年だけ そのあとは、普通の融資と同じで毎月利子を払っていく
- 「セーフティーネット保証4号」「(同)5号」「危機関連保証」のいずれかを利用
- 上記の保証制度ごとに、売上高の減少要件がある
- 運転資金、設備資金、借換資金に利用可
- 融資限度額 4,000万円(注 2020/7/1現在)
- 返済期間 10年(返済開始を、最大で5年間据え置くことも可能)
- 融資利率は都府県、保証制度により違う
- 都府県によって、実質無利子の取扱も違いがある(次項で説明)
- (注 売上高の減少要件や、融資利率などは銀行や信用保証協会に確認して下さい)
実質無利子って怪しいのでは?
「実質無料」「実質無制限」などと謳われていても、スマートフォンのキャンペーン等に使われることが多いため、条件をクリアしないとダメ、セットで購入しないとダメ、など「実質」にはネガティブなイメージもあります。
しかし、コロナウイルスの実質無利子融資に限れば「本当に3年間は無利子」です。
では、なぜ実質無利子と表現するのか?というと「本当は有利子(利息が必要な)融資だけれど、国が利子を補填するから実質的には無利子」ということです。
そして補填の言葉どおり、一旦は利子が徴収されて、それをあとから補填する方法も都府県によって2つのパターンがあります。
パターン1.当初3年間、毎月利息を払うが、あとから補填される⇒神奈川県など
パターン2.当初3年間は本当に無利子、利息支払不要⇒東京都、大阪府など
パターン1は、補填され、実質的に無利子になるので「実質無利子」
一般的な融資のように、一度は利子を払い、あとで補填してもらうの方式です。
パターン2は、銀行が利子を据え置き、国から銀行へ補填されるので「実質無利子」
顧客は無利子で借りるが、本来必要となる利子を銀行が立替えて(利子を計算して、顧客から徴収せず据え置く)国⇒銀行に利子が補填される仕組みです。
実質無利子融資の注意点3つ
実質無利子融資制度の注意点は以下の3つです。
注意点1 補助金ではなく融資、だから返済しなければいけない
「実質無利子融資制度」は融資であって、補助金や助成金のように支給されるお金ではありません。
勘違いをして「実質無利子融資をもらいにきた」と銀行に行ってしまう人もいましたが、融資ですので、借りたら返さなくてはいけません。
注意点2 返せない時はどうなるか?融資残金と利子
実質無利子融資制度は、信用保証協会の保証がある融資です。
返せない時は、他の信用保証協会融資と同じ、代位弁済(返済不能になると、信用保証協会が融資残金を一括で立替払いし、その後は信用保証協会に返済していく)となります。
融資残金は残り、延滞していた期間の損害金(遅延損害金)も払う必要があります。
実質無利子融資だからといって、特別扱いはありません。
注意点3 返せなくなって、そのあとどうなるのか?
代位弁済となることは説明しましたが、元来実質無利子融資は国の施策によって優遇された融資制度ですから、それにも関わらず返済できなかった(酷な表現ですが)とみなされ、ペナルティは大きくなります。
代位弁済になると。再び融資を受けられるまで、時間がかかるのが一般的です。
しかし、実質無利子融資すら返済できなかったという事実は、さらに障壁となることが予想されます。
現状の申込み状況は? 少しでも早く借りるには?
実質無利子融資制度の申込み状況と、少しでも早く借りるには?の参考となる説明をします。
なお、申込み状況については記事作成日(2020/6/20)現在の水準です。
また記事中に紹介する内容は、あくまで一般的な例です。
実際に申込みをする際には、必ず金融機関や役所窓口など担当部署に確認してください。
まず現状の申込み状況について、簡潔に説明していきます。
なお、皆さんが知りたいのは「少しでも早く借りるには?」だと思いますので、ここは状況の説明に留めます。
ただし、今の状況を知っておくと参考になりますので「少しでも早く借りるには」を読んだあとでこちらに移っても結構です。
現在の申込み状況~「申込みが殺到!」・・・していません
日本政策金融公庫など「公的金融機関の実質無利子融資制度」がスタートした当初は
- 「窓口に申込みが殺到」
- 「対応に追われる担当職員」
- 「融資実行まで長期化の予想」
といったニュースがありました。
では、民間金融機関でも実質無利子融資がスタートした現在、申込み状況はどうなっているのでしょうか?
- 融資実行額は増加している
- 申込みから実行まで、おおむねスムーズに流れている
- それは役所、金融機関で申込みがシステム化できているから
- 金融機関オリジナル融資で対応していることも一因
- それでもある程度時間はかかるので注意が必要
いかがでしょうか。実際のところは、粛々と貸し出しが進んでいるという状況であることがお分かりいただけると思います。
融資実行額は増加
全国銀行の貸出金は、前月末比 9 兆 5,579 億円、1.8%増、前年同月末比で は 32 兆 322 億円、6.4%増であった。前年同月末比増加は、105 か月連続である。
<引用2020 年6月5日 一般社団法人全国銀行協会 全国銀行 預金・貸出金速報 ― 2020 年5月末
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/stats/month1_01/yokashi03481.pdf >
この統計が示すように、金融機関からの融資実行は増加しています。これは銀行のみ(信用金庫、信用組合は含まれていない)の数字ですが、2020年5月では先月より9兆円、前の年の5月と比べれば32兆円も貸出額が増えています。
すべてがコロナウイルス関連ではありませんが、コロナウイルス関連で融資実行額が増加していることはデータからもうかがい知ることができます。
おおむねスムーズに流れている
金融機関の窓口に融資相談者が殺到することはなく、また役所の認定(詳細下記)窓口も落ち着いている状況です。
実際に銀行員の方に状況を聞いても、特段の残業や休日出勤はしておらず、全般的に落ち着いています。銀行によってはリモートワークを取り入れているところも出てきていました。
申込みがシステム化できているから
それは役所、金融機関双方で、申込みがシステム化されているからです。
それは、実質無利子融資制度で必須となる役所へのセーフティネット認定申請を金融機関で取りまとめる形(ワンストップ手続き)が主流となっているからです。
現在は①金融機関でとりまとめる方法が主流、こちらはスピードも早いので後半で詳しく触れます。
<参考 横浜市ホームページ/セーフティーネット保証のための認定について
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kigyoshien/yushiseido/nintei/safety.html >
事業者本人が役所に行くとなると、事前予約が必須となることに加え、専用に用意された認定会場で混雑が発生し、まさに密な状態となり、正に本末転倒な状況になります。このような事態を回避するために、金融機関における取りまとめが推奨されている訳ですね。
金融機関オリジナル融資で対応
金融機関では、コロナウイルスに対応するオリジナル融資(プロパー融資等)を取り扱っています。融資額や金利など条件はさまざまです。
共通しているのは
- 売上減少でも融資が可能
- 原則無担保、保証人不要(例外あり)
- 低金利が多い
金融庁より「金融機関は独自の融資等も活用し円滑な資金調達に尽力せよ」といった趣旨の要請(要は命令)があり、それに対処する形でオリジナル融資を積極的に推進しています。
事実、金融機関のホームページにオリジナル融資の宣伝はあるが、実質無利子融資制度には触れていないところが多いです。(検索や何回も遷移すれば実質無利子融資制度たどり着けるところもありますが)
金融機関オリジナル融資のほうが、スピード面でも早い場合にはこちらが優先されるので、これも実質無利子融資制度に殺到していない一因となっています。
それでもある程度時間はかかる
以上、申込みの状況を説明してきましたが、それでもある程度の時間はかかります。
- 自分で役所に認定申請書を提出(事前予約なら待つ日数もプラスされる)
↓(認定申請書が発行されるまでは、最短で2日程度)
- 銀行に提出して、融資申込みと信用保証協会への申請
↓(信用保証協会の審査は最短で5日程度)
- 審査が通って
↓(金融機関の審査は最短で2日程度)
- 契約書類に署名して
↓(契約から実行まで最短で1日程度)
- 融資が実行されて口座に入金となる
上記したように、最短でも10日はかかります。しかも、これはあくまですべてスムーズに進んだ場合です。
どうしてもある程度の時間はかかりますので、急ぐ場合などは金融機関オリジナル融資や、つなぎ融資(一時的に借り手、実質無利子融資が実行されたら返済する)の利用など金融機関に相談して見るのも良いでしょう。
少しでも早く借りるには?
少しでも早く借りるにはどうしたら良いか?に対する答えはこちらです。
認定申請書を金融機関でとりまとめる方法が主流、こちらはスピードも早い(前出)
裏ワザやマル秘テクニックを期待されていたなら残念ですが、そのようなものはありません。
実質無利子融資制度制度では、認定申請書を役所からもらうまでの時間が重要です。
金融機関の審査は他の借入と同じ内容ですし、審査自体柔軟にスピーディーに進めるよう金融庁からも指示されています。したがって、早く借りれるかどうか?は認定申請書をどれだけ短時間で入手するかにかかっているのです。
「認定申請書は金融機関経由」が一番の近道
例えば横浜市のように、役所でも金融機関経由の提出を推奨しています。
それには下記の理由があげられます。
- 金融機関で事前にチェックし不備があれば直してくれるから
- 金融機関でプロのチェック済み(証左として支店長の印を押す)だから
- チェック済みなので、役所では事務処理だけで済む(例外あり)
本人が直接役所窓口に来る場合は、申請書類をすべて役所で確認しなければなりません。もちろんそれが本来の姿ですが、当然ながらチェックに時間がかかります。また申請する人も言ってみれば素人なので、書類の不備不足があれば連絡して、直してもらって、またチェックしてというように手間と時間がかかります。
しかし、金融機関経由ならそれらのチェックを金融のプロがやってくれるのです。言ってしまえば、一部の認定業務を金融機関が代行するということなのですね。
従って、申請までに要する時間は大幅に短縮されます。
少しでも早く借りるには、認定申請書は金融機関経由が一番の近道これに尽きます。
まとめ~注意して欲しいこと
繰り返しになりますが、実質無利子融資制度を早く借りるには、裏ワザやマル秘テクニックはありません。
まずもって、同じ境遇で困っている人は数多くいます。
自分が不正な手段で早く借りると言うことは、真面目に対応している人達を不正に押しのけることになります。
また、ネットなどで
「実質無利子制度、早く借りるお手伝いをします」
「認定申請書の手続き代行」
といった宣伝を見かけますが、中には悪質な業者も横行しているようですので、充分注意してください。
実質無利子融資制度制度は、利子も保証料も一定期間無料にして救済する措置です。認定申請書の申請から融資実行まで無料(注 通常なら必要となる借用金証書の印紙代も無料となるケースもあります)です。
認定申請書の手続き代行で、資格があり信頼できる業者に依頼する場合も、短縮されるであろう時間と費用対効果は充分に検討することをおすすめします。