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銀行は中小企業をほぼ自動的に格付けしている

銀行が融資(自己の保有する債権)をデフォルトリスクで区分けし、その区分けに応じた貸倒引当金を積み増す一連の作業が「自己査定」自己査定の作業で取引先=債務者を区分するのが「信用格付」(債務者格付、銀行格付)、信用格付で判定された債務者の区分(ランク)が「債務者区分」

上記はこちらの記事の冒頭部分で説明していますが、今回は信用格付について説明していきます。

信用格付とは?

自己査定、信用格付、債務者区分といった用語は銀行業界独自のものですが、そのもとになっているのは「金融検査マニュアル」というものです。監督官庁である金融庁が、銀行の健全性を調べることを「金融検査」と言い、いくつもの検査項目を細かく、そして厳しくチェックされます。こうした検査項目の中に「貸出金の返済についてのリスクを含めたリスク管理態勢の検証」というものがあります。これは銀行の融資審査手法や、債務者の管理体制など融資全般にかかわるものです。自己査定などの一連の作業が正しく行なわれているか?というのもこの「リスク管理体制の検証」に含まれています。

この金融検査についての説明、検査の進め方やチェックされる項目などが書かれているのが「金融検査マニュアル」なのです。金融検査マニュアルでは、自己査定によって債権(貸出金のこと)を区分けすることを「債権を分類する」と表現しています。そして分類された中でも債務者の立ち位置が低い債権、つまり銀行から見て回収リスクが高い債権がいわゆる「不良債権」と呼ばれているものです。話しが堅苦しくなってきたので金融検査マニュアルについてはこのくらいで終わります。

ここまで簡単にまとめると金融検査マニュアルで決められた債権の区分けが自己査定で、債務者の立ち位置を決める作業のことを「信用格付」といい、作業により区分けされた債務者の立ち位置が「債務者区分」と言えます。では信用格付には具体的にどのような工程があるのでしょうか?

工程その1.大企業と中小企業では方法が異なる~大企業は定量評価

信用格付では規模の大小でまず区別をします。売上や従業員数から「年商○○億円以上は大企業」「従業員500名以上は中堅企業」といった具合に分けます。(銀行によって判断基準は違います)

大企業や中堅企業では、決算書を見る以外に業界の平均値と比較したり、外部格付機関の評価資料を使用したりします。決算書や格付資料などの数値やデータのことを定量情報といい、定量情報を重視することから大企業や中堅企業の信用格付方法は定量評価とも呼ばれています。

大企業、中堅企業以外を中小企業(中小、零細企業と更に細かく分ける場合も)と定義し、中小企業の格付作業には定量評価と定性評価の両方が用いられます。

工程その2.中小企業の信用格付も定量評価から

中小企業の格付も基本的には決算書など数値を重視する定量評価です。

特に借入額が少ない債務者、つまり銀行とはまだまだ親密な取引ができていない小規模な企業の場合、決算書の数値を専用のコンピュータソフトで分析し、格付作業のほぼすべてが完了します。

これらは「自動格付」「スコアリング」などと呼ばれるもので、こうした自動格付の場合は銀行員が見直すことはまずありません。省力化が理由なのですが、「小規模な債務者は機械に格付させれば良い」という考えもあるからです。

工程その3.中小企業では定性評価も必要になる

ちなみに自動格付では財務諸表などの精緻な分析はしません。これは端的に言うと「赤字か?黒字か?」という判断くらいしかしないということです。文字通り機械的な判断しかできないので、自動格付した結果債務超過などのネガティブな部分がある債務者は、すべて格付結果が悪くなってしまいます。作業を機械任せにして格付の悪い債務者ばかりになってしまっては、今度は銀行が融資できる先が無くなってしまいます。

そこで数値以外の情報で格付を調整することがあります。数値以外の情報を定性情報といい、格付の調整を補正と言います。

定性情報と補正について

定性情報の具体例としては、「当社には他にはない技術力がある」「地域にとって無くてはならない企業」などがあげられます。よく言えば数値化できない真の価値、悪く言えば「物は言い様(いいよう)」といったところでしょう。。

しかしながら、上に挙げたような理由があれば格付を調整(この場合は上方修正)して良いと、金融検査マニュアルにも記載されています。「技術力」「地域に無くてはならない企業」といったキーワードは、決算書だけでは決して見えてきません。まさに「定性情報」といえるもので、信用格付が始めから終わりまで機械の自動格付で終わるものばかりではないのはこれが理由です。やはり最後には人間の手作業が必要になります。

定性情報を使って格付を調整(補正)するには経験、文章力といった個人の力量が試される場面で、銀行では「補正して債務者を救う(格付を上方修正)ことができて、初めて一人前の銀行員」と考えられています。

まとめ

中小企業の場合、信用格付けはほとんど専用のコンピューターソフトで自動化されており、ほぼ赤字か黒字かで格付けされていまいます。その後、人の手で補正が入りますが、そもそも日頃から担当者と信頼関係が築けていない場合、そういった可能性も低くなってしまいます。

まずは、税金の節税で赤字にしようとするのではなく、黒字は確保するようにしましょう。また、日頃から銀行担当者とのコミュニケーションを密にするようにしましょう。銀行との良い関係の築き方はこちらの記事で解説しています。

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