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債務者区分とは~銀行の自己査定

「今までは必要な時いつでも融資してくれた銀行が、二期連続赤字になった途端急に冷たくなり、融資をしてくれなくなった」

これは銀行と長年融資取引してきた社長さんの素朴な疑問です。

決算内容が良ければ銀行は融資してくれるが、赤字企業にはなかなか貸してくれない。これは世間一般の常識です。ではなぜ赤字企業には融資してくれないのでしょうか?それを理解するには「自己査定」「信用格付」「債務者区分」といった銀行融資の基本事項を知ることが必要です。

今回は銀行が企業を見る目、その企業に融資するか否かの判断基準にもなっている、これら重要なキーワードについてわかりやすく説明していきます。銀行と融資取引中の人は、自分が銀行からどのように見られているのか?それを知る為の知識としてください。そしてこれから銀行で事業資金融資を受けようと考えている人もぜひ参考にしてください。

目次

自己(じこ)査定(さてい)~融資が不良債権になっていないか?銀行の自己チェック

銀行が融資(自己の保有する債権)をデフォルトリスクで区分けし、その区分けに応じた貸倒引当金を積み増す一連の作業が「自己査定」

自己査定の作業で取引先=債務者を区分するのが「信用格付」(債務者格付、銀行格付)
信用格付で判定された債務者の区分(ランク)が「債務者区分」

難しい表現をするとこうなります。もう少しかみ砕いた表現をすると
「銀行が健全経営するために債権を区分けし、リスクに応じ引当金を積むのが自己査定、そのために信用格付をおこない、信用格付で決められた債務者の立ち位置が債務者区分」という関係です。
今回は自己査定、信用格付、債務者区分とは?の基本的説明のあと、では債務者区分は何に?どのように影響するのか?そして債務者区分を上げることはできるのか?といった点についても触れていきます。

自己査定とは?

タイトルにあるとおり自己(じこ)査定(さてい)とは、融資が不良債権になっていないか銀行が自己チェックをすることです。

では、融資が不良債権になると何がいけないのでしょうか?これを理解するためにまず銀行とは?という原点の部分から説明していきたいと思います。キーワードになるのは「金融仲介機能」です。

金融仲介機能を維持するために必要な自己査定

金融仲介機能があるから銀行は金融機関と呼ばれています。

預金でお金を集めて、必要な相手に融資をして、利息と一緒に全額返済してもらい、預金が満期になれば利息を付けて預金者へ払い戻す、これが銀行の金融仲介機能です。文字にすれば当たり前なのですが、

その当たり前のことをキチンと行なうには、融資したお金は期限までに返済してもらわなければいけません。

しかしながら、すべての融資が返済されるわけではありません。業況悪化や倒産などで返済できなくなった融資のことを「不良債権」と言います。

借金なのに債権?~銀行にとって「負債」「債権」は一般企業の逆

銀行にとっての「負債」は預金になります。一定期間お金を借りて(預かって)、それに見合う利息を付けて返す。預金も借入もこの点では同じですから、銀行が満期日まで預金者から借金するのが預金とも言えます。

いっぽう融資は銀行にとって「債権」(つまり資産)になります。理屈は預金と一緒です。

このように一般企業とは逆になっている融資(債権)が返済不可能になった場合、融資した元金がどのくらいまで回収できるのか?それをあらかじめ見積もっておく(査定)こと、つまり「銀行が債権を自己チェックして査定」するので自己査定と呼ばれているのです。

自己査定は銀行決算を左右する

融資したお金が返ってこなくなることを「貸倒れ(かしだおれ)」と言います。企業の決算では、売掛金や未払金が相手企業の倒産などで回収できなくなることを貸倒れと表現しますが、この場合銀行にとって融資(債権)は一般企業の売掛金と同じなのです。

一般企業では貸倒れを予測し「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」を計上して、利益から相当額を前もって差し引いています。銀行もこれと同じように、融資したお金が不良債権になる危険性(これをデフォルトリスクと言います)を予測し、貸倒引当金を積んで置くことが必要で、その作業全般が自己査定なのです。

自己査定をした結果(自己査定では融資を仕分けすることを分類すると表現します)分類額に応じて貸倒引当金を計上しなければならず、不良債権になる可能性が高い融資が多くなるとそれだけ貸倒引当金も多く積み増さなければならなくなります。貸倒金を積みますことは、それだけ利益が減ることを意味していますので、当然銀行の決算は悪化することになります。

不正な手段で収益不動産融資をした地方銀行が不良債権を見直し、貸倒引当金を大幅に積み増した結果、黒字から反転して赤字決算になったことは記憶に新しいところです。

自己査定を見誤ると破綻?

回収できなくなった融資金とは、すなわち顧客から集めた預金です。不良債権とは言い換えれば融資したお金が消えてしまったのと同じことです。債務としての預金はそのまま残り、債権としての融資金が無くなってしまうので、銀行は債務超過となりやがては破綻してしまいます。

このように自己査定は銀行決算と経営事態にも影響する重要な作業です。

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