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売掛債権担保融資、ABLとは?その特徴と注意点

売掛債権担保融資は、文字どおり売掛債権を担保にした融資のことです。

融資形式としては

  • 証書貸付
  • 手形貸付
  • 当座貸越

などがあり、すべてに共通するのが「売掛債権が担保になっている」という部分。

ですから厳密には融資というより「担保の一種」と言ったほうが正しいと言えます。

なお売掛債権担保融資と関連して「動産担保融資(Asset Based Lending、略してABL)」があります。

こちらは担保が「売掛債権」と「棚卸資産」の2種類になる形式です。

売掛債権も棚卸資産も土地建物のように固定して動かせない資産、つまり不動産と区別して「動かすことのできる資産」という意味で「動産担保」と呼ばれています。

ここまでまとめると

  1. 動産(売掛債権と棚卸資産)を担保にした融資が「動産担保融資(ABL)」 
  2. その中で売掛債権を担保にした融資が「売掛債権担保融資」

という区分けになります。なお次項「ファクタリング」と比較するため、売掛債権のみ説明し、棚卸資産については省略します。

目次

売掛債権担保融資とは?

では、まず売掛債権の説明から初めていきます。

売掛債権とは?

売掛債権とは役務(えきむ)の提供をして、その相手に代金を請求する権利のことです。

役務の提供とは、たとえば品物を納入する(製造業、卸売業)、または工事をしたり荷物を運んだりする(建設業、運送業)ことで、要は一般的な商取引を意味しています。

売掛債権の代表的なものは売掛金で、他にも売掛債権の種類は複数あります。

ちなみに取引相手のことを第三債務者と呼ぶこともあります。これは、流動資産担保融資では顧客(債務者)だけでなく、取引相手も売掛債権の支払義務があり、融資する銀行から見れば債務者と言えるからです。

売掛債権の種類

売掛債権には以下の種類があります。(全て担保にできます)

<売掛債権の種類>

化体(かたい)手形(てがた) 売掛債権のために振り出された手形、つまり約束手形のこと

(なお約束手形は手形割引があるので担保にはしませんが、まれに約束手形を担保にして融資する場合もあります)

既(き)発生債権 請求できる債権、つまり一般的な売掛金を指す
未発生債権 工事が未完成などで、まだ請求ができない売掛債権
将来(しょうらい)債権 請求できる状態だが、事前の契約で請求可能な時期がまだ来ていないもの

(未発生債権、将来債権は種類の説明だけとします)

売掛債権の具体例

次に売掛債権の具体例は以下の通りです。

<売掛債権の具体例>

売掛金債権 売掛金のこと
割賦販売代金債権 分割払いで販売した売上代金
運送料債権 運送業の運搬代金
診療報酬債権 病院で窓口負担(国保なら1割など)以外の、国保や健保が病院に後払いする診療報酬
工事請負代金債権 一般的な工事代金

第三債務者(取引相手)も審査される?

第三債務者、つまり売掛債権の支払者である取引相手も銀行から審査されます。

上記した売掛債権を担保にするので、その支払能力や信用も銀行にチェックされるのです。

これは不動産担保と同じ理屈で、不動産なら売却出来そうな価格が評価額(担保評価)になりますが、売掛債権担保同様に銀行で評価されます。

たとえば病院の診療報酬債権なら支払者は国や市町村、または健康保険組合なので、支払能力に問題はまずありません。

しかし一般企業の場合は、担保にした売掛債権を払う企業が倒産したら銀行は損してしまいます。

そこで企業を調査して判断するのです。銀行などには専門講習を受講した「動産評価アドバイザー」がいて、その人が売掛債権を評価します。信用度、支払能力などが評価項目で、当然ながら国や市町村のほうが、一般企業より評価は上位になります。

担保なので登記もある~債権譲渡登記

売掛債権などの動産を担保にする場合には2つの方法があります。

1つ目は「質権」で、これは動産の現物、つまりそのもの自体を預かる形式で、いわゆる質屋さんのイメージです。

2つ目は「債権譲渡登記」です。

質権では現物を預かる必要があり、たとえば売掛金など目に見えないものは預かることができません。そこでこの債権譲渡登記を利用します。詳しい説明は省略させていただきますが、不動産担保の抵当権、根抵当権の代わりに債権譲渡登記があるとイメージしてもいいでしょう。

譲渡といっても、実際にされるのではなく「債務者が融資を返済できなくなったら、担保として銀行に譲渡されますよ」と登記しておく、という意味になります。

この債権譲渡登記はファクタリング(次項で説明)でも利用されます。

お互いの取引が1年以上なければダメ!

債務者(融資の申込者)と取引相手とは、1年以上(原則)取引がないといけません。

これは、たとえば債務者と取引相手が結託し架空の契約をでっち上げ、流動資産担保融資を悪用されないためのきまりです。

まとめ

ここまでの説明をまとめると

  1. 売掛債権担保融資とは、売掛債権を担保にして融資すること
  2. 売掛債権は化体手形(約束手形)や売掛金などの種類がある
  3. 約束手形は手形割引があるので担保にしない
  4. 売掛債権にも診療報酬債権や売掛金(売掛債権)がある
  5. 支払相手(第三債務者)も審査される
  6. 国などの診療報酬債権のように、信用度が高いと担保評価も高くなる

手形割引の項で「手形割引は手形を担保にした融資(説)、手形の買取り(説)がある」と説明しました。

売掛債権にも似たような点があり、売掛債権を担保にするのが今回説明した売掛債権担保融資、そして売掛債権の買取りが「ファクタリング」です。こちちは別途説明します。

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