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手形も電子化の時代~電子債権と手形はどう違うの?
手形も電子化の時代~電子債権と手形はどう違うの?

今でこそ情報技術(IT)分野が発達し、電子債権やファクタリングなどが出てきて、手形の現物というものが少なくなってきている反面、未だにそういったものは信用できないとか、怖いといった理由で、手形を振り出したり受け取ったりしているケースは、特に中小企業ではまだまだ多いのではないでしょうか。

目次

手形は駄目で電子債権はOK?

ある会社(以下、A社とします)では手形を振り出すことは絶対にありませんし、手形で受け取る事もほとんどありません(どんなに相手先の条件が良くとも、手形取引の場合は必ず是正するように指示があり、それが叶わないと分かった場合は取引を中止します)。

それは社長がなぜか手形を嫌っているためです。

結果、現在手形の取引は全くありません。しかし、電子債権の利用についてはとやかく言わないという状況です。

しかも、電子債権は月商の約50%ある状況です。最近も新しく取引を始めた企業の支払い条件が90日後の電子債権というケースがありました。その辺の取引条件は社員から社長に確認があるのですが、特に何もいいません。(ちなみに新規取引企業は一部上場企業です)。

なぜ、手形は駄目で電子債権は可能なのでしょうか。

私:「社長、なんで現物の手形はダメで、電子債権はいいんですか?」
社長:「・・・・・・・(無言)」
私:「分かりました。ありがとうございます。」

だいたいいつもこのような感じです。

実は、現物手形と電子債権の違いは、インターネットで検索すれば直ぐに調べることができ、「全く違う」「似て非なるもの」という内容がほとんどですが、管理コストの違い以外あまり違いはありません。

では、手形と電子債権の違いを、受取~資金化までの流れで見てみたいと思います。

手形の種類

  1. 手形の現物を受け取る→期日まで保管(期日前に金融機関へ取立て依頼【取立て手数料必要】)→売上が入金になる
  2. 手形の現物を受け取る→金融機関へ手形割引を申し込む→割引手数料が差し引かれ、手形額面金額が入金となる
  3. 手形の現物を受け取る→裏書し、別の支払先へ譲渡できる

電子債権とは?

まず、電子債権利用の申し込みを金融機関等へ行うことが必ず必要です。

  1. 取引先より売上(売上債権の発生)→期日になると、売上が入金になる
  2. 取引先より売上→金融機関へ割引を申し込む→割引手数料が差し引かれ、申込金額が入金となる
    ※手形と違い、額面以内であれば希望金額にて申込可能
    ※金融機関によって手続き方法が違うため、事前に確認しておくと良い。
    ※参考までに、当社で初めて債権を割引しようとした時に、全部PC上で完結すると思って余裕を持っていたら、結局紙での申し込みが必要になるため、気をつけて下さい。
  3. 取引先より売上→売上債権を、別の支払先へ譲渡可能
    ※電子債権の利用状況(でんさいなのか、それ以外なのか)や取引先の状況によりできない場合があるので、事前に確認しておくと良い

手形と電子債権の違いと電子債権のメリットとは

ITの進化によって、紙が電子化されるのは自然の流れだと思います。

上記A社も電子債権を利用して1年弱ですが、今では取り扱いにも慣れ、ほとんどがPC上で完結しますので、非常に楽です。

上手に活用すれば、皆さんがご存じの通り管理コストは劇的に減少しいます。ですが、あくまで手法の部分が変わるだけです。例えば、電子債権に切り替えるので、支払いの期日を90日から120日に変更してほしい、といった依頼があったとすると、管理コストの軽減以上に、資金繰りリスクが増すことに注意が必要です。

その点はしっかりと確認したうえで、取引をしてください。

よく理解しないまま、切り替えたりするのは絶対にやめた方がいいと思います。

電子債権のメリットまとめ

  1. PCで管理ができるので現物を保管するリスクがなくなる(盗難・紛失など)
  2. 取立手続きが不要
  3. 印紙代が不要

ファクタリングとの違いとは

最後にファクタリングとの違いをみていきます。

ファクタリングとは、受取までに期日のある売上債権を第三者(主に金融機関など)に対し、手数料を支払うことで直ぐに資金化できる方法です。

多くの中小企業で利用されておりますが、基本的に事前に金融機関に申し込みしておき、その企業から売り上げがあった際に、FAXで申し込みをすれば、2~3日後には資金化になります。

ファクタリングに関しては、その売上先の企業の財務内容などにより、引き受け可能か、手数料がいくら(金利何%)かが決まりますので、全ての企業の売上をファクタリングできる訳ではありません。

しかし、資金化が迅速なことから、資金繰り上とても有効な方法ですので、資金繰りに苦しいと思った場合は、活用を検討するのが良いでしょう。

このファクタリングと手形やでんさいの譲渡とは何が違うのかですが、ファクタリングとは融資(ローン)の一種であることです。

どういうことかというと、ファクタリングを利用する場合、会社(便宜上X社とします)がファクタリングサービス会社に売掛債権を譲渡(売却)し、売却代金を得ることができますが、取引先はその事実を知ることなく、支払いをX社にします。

ファクタリングサービス会社は、振出人から直接回収する訳ではありません(2社間の場合)。そして、支払いを受けたX社は回収したお金をファクタリングサービス会社に支払うことになります。

一方、手形の裏書の場合、振出人からお金を回収することになります。

この点、ファクタリングと手形は大きく異なります。誤解を恐れずに言うと、ファクタリングは実質的につなぎ融資と言えるのです。

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