読んでおきたい

銀行から事業資金を借りる際、金利が思ったより高い!と思った方も多いと思います。

逆に、まあこの程度かと思った方もいるかもしれません。

銀行にとって金利は、事業会社で言えば売上(粗利益率)に関わる極めて重要な要素であり、その幅も数%の範囲内に収まるものですので、「おまけして0.5%下げましょうか」といった具合にはことが運びません。

銀行で金利が決まる仕組みは、トップランクの極秘事項と言う人もいます。 特に事業資金の金利については様々な要素が絡んできます。

とは言え、少なくても日銀の当座預金の金利がマイナスにされることで、各銀行の貸出金利が低くなるのは、周知の事実ですし、企業の収益状況によって金利が変わるなどの大まかなメカニズムは特に秘密でもなんでもありません。

本稿では、金利はどのように決められるのか、大まかなメカニズムを中心にお話していきます。

目次

金利を決める仕組みは極秘事項?

たとえば八百屋さんでキャベツが1つ300円で売っていたとします。このとき販売価格には、経費と儲け(利益)を仕入れ値にプラスして売っています。

当たり前と言ってしまえばそれまでですが、銀行も仕入値(この場合は預金が仕入に当たります)に経費と儲けをプラスして融資の金利になっています。

金利を決める仕組みを公表すると不都合があるから

そのプラス分(銀行にとっての儲けの割合)を公表すると、いろいろ不都合が出てきます。

ましてどのような基準で金利が決まるか?もです。

受け取る人(経営者)によっては、「何故うちの金利だけこんなに高いのだ!?騙しやがって!」とトラブルに発展する可能性すらあるからです。

金利が決められている融資と、銀行が金利を決める融資がある

銀行の融資には

  • 金利が決められている融資
  • 銀行が金利を決める融資

この2種類があります。

金利が決められている融資~ローン

住宅ローンを代表格にして、マイカーローン、カードローンなどのローンは、原則として金利が最初から決まっています。

たとえば住宅ローンを例にすれば、銀行のホームページなどですぐにわかります。

「今月の住宅ローン・変動金利型は〇〇%です」

といった具合です。

この場合も〇〇%~▲▲%のあいだ、といったように幅がありますが、それでも原則としてその範囲内の、どれかの金利になります。細かい差は借りる人の年収や勤務先などによる個人差です。

住宅ローンは銀行のイチ押し商品でもあるので、競争が激しく、金利も競争の1つになっていますが、多少の差はあってもほぼ同水準なのは、金利の決まる原理が銀行で共通しているという、1つの証拠でもあります。

ただし創立何十周年記念といった名目で、特別に低い金利の銀行もありますので、一概に横並びとは言えません。

銀行が金利を決める融資

ローンと違い、事業資金融資の金利は銀行が決めます。

銀行と融資取引した経験がある人はわかると思いますが、事業資金融資では一方的に金利が決められてしまいます。

そこに、借りる人の意思はほとんど反映されません。

ただし、銀行によっては上記の住宅ローンと同様に基準となる金利は公開されています

例えば、政府系金融機関である日本政策金融公庫では、ホームページ上で金利情報が公開されていますので、事業資金を借りるとしたらどれくらいになるのかは事前に判断できるでしょう。

金利より「借入できるか?」が大事

事業資金では、なによりもまず、融資が受けられるのか?ということが重要です。

借入できるか?できないか?で事業の行く末が左右されるので、金利もそうですが、返済年数や担保など、銀行から示された条件を呑むしかないのが普通です。

事業資金の融資が決まったら上記の条件と一緒に、銀行が決めた金利を顧客に説明する、ただそれだけです。事前の交渉や、どうやって金利を決めたか?などの説明はまずありません。 

金利はあとで通知されるだけ

繰り返しになりますが、事業資金では銀行が金利を決めます。

銀行の内部で金利が決まり、あとで通知されるだけです。

一般の取引先へもこうした対応ですが、優良な相手でも事前に金利が決まるプロセスなど内幕を話すことは絶対になく、ただ「今回はこのくらいの金利でお取引頂けますか?」と丁重に、しかし通知するだけです。

銀行の金利を決めるルールとは?

基本的な考えは一般の人にもわかるシンプルなものです。

具体的な作業やプロセスは極秘ですが、この基本的な考えをもとに、少しだけ金利が決まるルールをお話しします。

金利は要素の組み合わせで決まる

金利はいくつかの要素の組み合わせで決まり、その基本原則は以下の通りです。

<金利を決める要素>

  • 借入期間が長いほど金利は高い
  • 担保がある融資より、担保がない融資が金利は高い
  • 赤字企業は黒字企業より金利が高い

借入期間が長いほど金利は高い

すぐ返してもらうほうが、銀行としての貸し倒れリスクは少ないからですね。

この場合のリスクとは「貸したお金が帰してもらえなくなるリスク」で回収リスクなどと呼びます。

長く借りるから金利が高いのではなく、長く借りると返せなくなるリスクが高くなるから、金利を高くする

という考え方です。

担保がある融資より、担保がない融資が金利は高い

これも、上記した内容と同じです。

担保があるから金利が低くなるのではなく、担保があれば返せなくなったとき換金して融資を回収できるから、担保がない融資よりは金利を安くする

という考え方です。

赤字企業は黒字企業より金利が高い

回収リスクを考えれば、黒字企業で利益が出ていると安心度が高くなります。

赤字だから金利が高いのではなく、赤字だから返せなくなるリスクが高いと考えられ、金利も高くなる

という考えです。

具体例

上記では、日本政策金融公庫では基準金利の幅が公開されていると書きましたが、その際のファクターも程度公開されています。

  1. 担保を不要とする融資を希望される方
  2. 新創業融資制度(無担保・無保証人)を希望される方(税務申告を2期終えていない方)
  3. 担保を提供する融資を希望される方(1~2より低い金利となります)
  4. 災害貸付、東日本大震災復興特別貸付(震災セーフティネット関連を除く)、平成28年熊本地震特別貸付(その他被害者を除く)、平成30年7月豪雨特別貸付(その他被害者を除く)、令和元年台風第19号等特別貸付(その他被害者を除く)、新型コロナウイルス感染症特別貸付をご利用される方
  5. 経営者の保証を不要とする融資(「経営者保証免除特例制度」など)を希望される方
  6. マル経融資(小規模事業者経営改善資金)、生活衛生改善貸付を希望される方
  7. その他

日本政策金融公庫の金利情報より

このように、政策的な要素とともに、担保や経営者保証の有無が金利を決めるファクターとなっていることが分かります。

頼んだほうが、頼まれたときより金利が高い

  1. 借入期間が長いほど金利は高い
  2. 担保がある融資より、担保がない融資が金利は高い
  3. 赤字企業は黒字企業より金利が高い

今回の振り返りは上記の通りですが、最後にもう一つ加えます。それは

頼んだほうが、頼まれたときより金利が高い

お金を貸して欲しいと頼むのは普通のことですが、銀行の決算や成績のために「借りてください」と頼まれるときがあります。 

貸してくれではなく、借りてくれと頼まれているわけですから金利は低くなって当然です。ただし、いくら低いとはいえ金利を払うのはあなたです。

そこまでして付き合うべきか?そこは慎重に考えてください。

相見積もりはすべきか?

経営者の中には、複数の金融機関に金利面を含めた条件を提示させて慎重に検討する方も中にはいますが、言うまでもないかもしれませんが、必ずしも金利が安い金融機関が良い訳ではありません。

根本的に重要なのはその金融機関と長く付き合えるかどうかです。

担当者や銀行の姿勢・熱意をより長期的な視点でみて、本当に困ったときにお金を貸してもらえるか、を見極めていただきたいところです。なお、倒産時における債権処理の姿勢も銀行によって変わります。

少しでも安い金利で借りたいというのは経営者としては間違った姿勢ではありませんが、個人的な感覚としては、パートナーという感覚を持って向き合うことも重要ではないかと思います。

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