売掛金などの債権を回収不能にしないためには

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サイトの長い債権は資金繰りを悪化させ、最悪は回収不能になることも

製品やサービスを販売してから代金の回収までの期間が短いか長いかは、業種や契約内容によって違いますが、現金商売を除けば概ね1ヶ月から4ヶ月を超えない期間がほとんどだと思います。

「末締めの翌日末払い」であれば期間は1ヶ月となり、実際の現金が動くのは1ヶ月後となります。

しかし、受け取り期間が2ヶ月、3ヶ月と期間が長ければ長いほどリスクは大きく、例えば期日までの間に支払い側が倒産すると代金の回収が困難になります。また、人件費などの固定費は毎月発生しますので、資金繰り上のリスクも増加します。

そして、実際の取引において、受け取るまでの期間が長いケースは少なくなく、特に立場の弱い中小企業では、売上を優先するあまり、不利な条件であっても相手先の要求を呑む、といったケースはよくあります。

また、売掛金などの債権が何らかの理由(主に支払い先の倒産)で固定化されている場合、固定化しているという事は、金額が動いていないという事であり、金額が動いていないという事は、債権を請求できなくなる時効の中断の事由に当たらないという事です。つまり何もしないまま放置していると、最短で2年で債権が時効を迎え、回収不可能となるという事になります。

では、サイトの長い債権の是正と固定化している債権の処理について、実例を挙げて説明したいと思います。

サイトの長い債権の是正

あるAという製造業の事例です。

A社の取引先で、支払い条件が10万円までは現金、それ以上は支払期日が120日後の手形を振り出す、というX社がありました。

X社は地域では比較的知名度のある企業で金融機関は割引に応じる企業でしたが、A社としては常に管理コストや、割引手数料(2~3%前後)などが発生していました。

しかし、全体に占める売上が少ないため(月商の2~3%)、しばらくその条件にて取引していました。ただし、その様な取引条件ではA社のリスクも大きいため、取引拡大をするという方針が取れず、取引は小さいままで停滞していました。

半年経過後、取引先より業務拡大の依頼があった際に、支払い条件の是正(全額現金支払い)を要求した所、その要求を受け入れてもらうことができました。

現状は末締めの翌月末払いとなり、取引の拡大にもつながっています。

上記のケースは取引が浅い企業であったため要求が通りましたが、大企業や取引年数が長い企業の場合は、言いにくい、言ったら取引を停止される、と考えてしまい、不利な条件のまま取引を継続するケースも見られます。

少しでも不利な条件を変えるための方法としては以下のようなことが挙げられます。

  1. 担当レベルではなく、会社としてきちんと要求する(文書など)
  2. 期日を縮めるのが難しい場合は、その割合を小さくする(全額手形→半金半手など)
  3. 新規受注がある際など、大きな変化点があったタイミングで改善を要求する
  4. 手形の現物ではなく、「でんさい」(電子債権)への切り替えを提案する

約2年前に下請法が改正され、弱い立場の中小企業が不利益を被らない様な取引環境も整備されつつあります。例えば商工会議所などにアドバイスを求めて対応する、という手もありますので、とにかくアクションを起こさない限り、改善はされませんので、取引先との関係性などを考慮し、一度要求してみる事をおススメします。

1年以上固定化している債権の処理

決算書の貸借対照表(バランスシート)上資産になっている科目の中に、売掛金や短期貸付金といった科目がありますが、取引先や業務を拡大している内に、その内訳までに目が行き届かなくなるケースがあります。

試算表や決算書の結果だけを見て、「資産超過だから大丈夫」と思っていても、内訳をみると、回収できていない債権や回収不可能な債権が記載されたままになっており、それを差し引くと、実際は債務超過というケースは、特に中小企業では少なくありません。

A社の例を引き続き挙げると、B社向けに200万円の短期貸付金が存在していますが、決算書を遡って確認すると3年ほど前から金額が変わっておらず、既に倒産している会社との事で、実際は回収不可能な資産(=不良資産)となっていました。

ちなみに、B社の登記事項証明書や所在地には、既に会社自体は存在しておらず、A社の社長も本件回収には積極的でないため、このまま放置することとなりました。

では、固定化している債権をどの様に処理すべきか、幾つかの方法を挙げます(法的手段は除きます)。

  1. 相手先と直接的に連絡が取れる場合は、とにかく毎月千円でもいいから回収し、不良債権化させない
  2. 相手先と連絡が取れない場合は、配達証明付き内容証明郵便にて、現在の債権額や支払金額と期日などを記載し、相手先へ送ります。相手が受け取った場合、電話やメールなどで請求するより、支払ってほしい意志が強く伝わります。また、支払い督促をすることで、時効の中断事由に該当します。
  3. 何度も請求等を行っても改善が見られず、(法的手続き等の検討となりますが今回は割愛)全額回収不能と見込まれる場合は、貸倒損失として経費計上して、バランスシート上からも削除します。

債権の管理回収業務は法的に専門的であり、組織的に弱い中小企業では難しい部分が多いと思います。一度現在の状況をチェックすると共に、専門家や金融機関の担当者に相談してみるのも一つの手となります。

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