新型コロナウイルスの影響で、経営に支障が生じている人を支援する国の施策として、さまざまな資金繰り支援策があります。
その中でも「実質無利子融資」が代表的なものです。
今回はこの「実質無利子融資」を受けるために必要な「セーフティーネット保証」に関して説明していきます。
目次
セーフティーネット保証とは?
実質無利子融資を受けるには「セーフティーネット保証」が必須となります。
セーフティーネット保証(正式名称は「経営安定関連保証」)とは、今回の新型コロナウイルス感染症による影響や、それ以外にも取引先の倒産など、経営に支障が生じている中小企業向け信用保証協会の保証制度(信用保証協会については後述)です。
「中小企業信用保険法」の第2条第5項の中で、さらに1~7号に分類され、このうちの4番目と5番目なので「セーフティーネット保証4号」「セーフティーネット保証5号」と呼ばれています。
信用保証協会について
ここで、まず信用保証協会について簡単に説明します。
個人事業主や中小企業など小規模な事業者で、信用力や資産に乏しく、銀行から直接融資(「プロパー融資」といいます)を受けることができない人のために、融資の保証人になってくれる公的機関が信用保証協会です。
法律(前出「中小企業信用保険法」)により設立された公的な機関であり、職員は準公務員的な立場として、その事業者を審査したうえで、融資の保証をします。
なぜ信用保証協会融資は優遇されるのか?プロパー融資との違いとは?
一般的にプロパー融資では担保や、資産のある保証人が必要になります。
融資したお金が返済不可能になったとき、担保にした不動産を売却したり、保証人に支払を求めたりして融資を回収するためです。
つまり「担保や保証人がなければ、プロパー融資は受けられない」とも言えます。
また、事業の業歴や銀行との取引実績なども積み重ねが必要で、かなりハードルが高いものとなっています。
いっぽう信用保証協会が保証する融資(信用保証協会融資、「マル保融資」とも)は、返済不可能になったら、保証人である信用保証協会が全額立替え払いしてくれます。
この点から「取りっぱぐれる」リスクの少ない保証協会融資を、民間金融機関は取り扱うのです。
ちなみに、立て替え払いの仕組みを代位弁済といいますが、代位弁済されたからといっても借金はチャラになるわけではありません。今度は信用保証協会と話し合って返済をしていくことになります。
また、上記したように公的性格の強い保証協会融資は国の施策に強く影響されますので、コロナウイルス関連でも、日本政策金融公庫などの公的融資では間に合わない、資金繰り対策の補完的役割もあります。
セーフティーネット保証のメリットや利用方法は?
4号、5号などセーフティーネット保証は以下のように共通しています。
<セーフティーネット保証の共通点>
- 保証が何号になるか?はそれぞれの要件(条件)で決まる
- 基本的に「困っている」ことが前提となる
- 市町村の認定が必要となる
- 国や県、市町村から補助を受けられる場合もある
「要件」とは要するに条件のことで、困っている原因により〇号と分けられます。
例えば
- 1号に認定されるのは、大型倒産に巻き込まれて影響を受けている場合
- 6号・7号は、融資取引する金融機関の破綻や経営合理化の影響で困っている場合
といった具合です。(なお共通点の2から4については、②で詳細を説明します)
では次に、4号5号についてそれぞれ説明していきます。
セーフティーネット保証4号のメリットと要件
セーフティーネット保証4号は「突発的災害(自然災害等)の発生により売上高が減少している」ことが要件になります。
突発的災害は激甚(げきじん)災害とも呼ばれ、例えば最近で言うと平成28年の熊本地震や平成30年から令和元年の豪雨や大型台風などがあげられます。こうした災害の影響で売上が減少した人がセーフティーネット保証4号の融資を受けることができました。
そして、今回のコロナウイルスも災害としてセーフティーネット保証4号の対象となったわけです。
メリットは以下のとおりです。
- 実質無利子で融資が受けられる(コロナウイルス限定)
- 信用保証料が無料になる(コロナウイルス限定)
実質無利子融資については②で詳しく触れます。ここではとりあえず、無利子で借入ができるとだけ説明しておきます。
また信用保証協会が融資の保証をするときに、融資金額の〇%といったようにお金を払うのが信用保証料(単に保証料とも)で、要は「信用保証協会は、タダでは保証人になってくれない」ということです。
今回のコロナウイルス関連では、この信用保証料も無料になる場合があります。
セーフティーネット保証5号のメリットと要件
セーフティーネット保証5号は「指定業種の事業者で、売上高が減少している」ことが要件になります。
コロナウイルスの影響で売上が落ちたから困っているということです。これが4号ではコロナウイルスという災害の影響で困っている、つまり4号も5号も理由は同じと言えます。
「売上が減少している」ことについても、細かく要件が決められています。
(イ)指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者
(ロ)指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない
中小企業庁ホームページ/セーフティネット保証制度(5号:業況の悪化している業種
指定業種とは、セーフティーネット保証5号を利用できる業種が限定されている、という意味です。しかしながら、コロナウイルスの影響より対象業種は拡大され、対象は1,145業種でほぼ全業種が対象となっています。
その他のポイントは以下のとおりです。(4号と同じ)
- 実質無利子で融資が受けられる(コロナウイルス限定)
- 信用保証料が無料になる(コロナウイルス限定)
セーフティネット保証4号と5号の違いとは
保証枠についてはセーフティネット保証4号、5号で異なりますので、まとめとして比較表を載せておきます。
4号 | 5号 | |
対象地域・業種 | 指定地域において1年間以上継続して事業を行っていること(現在47都道府県) | 指定業種に属する事業を行っている |
売上等の要件 | 原則として最近1か月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること(売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要) | 最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少(その他省略) |
保証割合 | 100%保証 | 80%保証 |
保証限度額 | 一般保証とは別枠で2億8,000万円(4号と5号は同じ枠となる) |
まとめとセーフティネット保証の利用方法
これまでの説明をまとめると、次のようになります。
- セーフティーネット保証とは、信用保証協会融資で公的融資の補完
- セーフティーネット保証4号、5号を利用すれば実質無利子融資が受けられる
利用方法としては以下の通りです。
対象となる中小企業の方は、法人の場合は登記上の住所地又は事業実体のある事業所の所在地、個人事業主の方は事業実体のある事業所の所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等の窓口に認定申請書を提出(その事実を証明する書面等があれば添付)し、認定を受け、希望の金融機関または所在地の信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込むことが必要です。
中小企業庁より引用