創業融資でネット検索すると、「創業融資 自己資金」が選択肢の上位に来ます。それだけ創業融資と自己資金の関係は、多くの人が気になる部分だとわかります。
そこで今回はこの点について、解説します。
結論から言うと、
創業融資に自己資金は必要、自己資金なしはダメ
これが銀行員の皆さんからの答えです。
詳しくは本文で説明しますので、是非参考にしてください。
目次
創業資金には自己資金が必要です
ネットの記事の中には、「自己資金のない人でも創業融資を受けるテクニック」といったものを見受けます。
しかし、融資をする側の銀行員の視点から見ると「これはおかしい」という人が多いです。
なぜなら創業融資では自己資金が必要だと、ハッキリ書かれているからです。
そこで、銀行と日本政策金融公庫の創業融資をそれぞれ見てみましょう。
銀行(信用保証協会融資)の場合は自己資金が必要
銀行における創業融資の主流は信用保証協会融資(マル保融資)です。
信用保証協会融資では、自己資金が必要だとハッキリ示されています。
Q.保証協会を利用して資金調達をする場合、自己資金は必要ですか?
A.「東京都制度融資」をご利用いただく場合、自己資金が要件に含まれないケースもありますが、当協会の保証審査において自己資金は事業経験とともに重要な項目になります。お客さまの創業計画をサポートさせていただく上で、創業に必要な資金の全額を借り入れでまかなうということは難しいとご理解ください。
自己資金の目安も決められている
たとえば上記に引用した東京信用保証協会の場合、融資限度額は3,500万円以内で、「自己資金に 2,000 万円を加えた額の範囲内」という但し書きがあります。
具体的には
自己資金が1,500万円ある人なら、3,500万円まで融資可能(1,500+2,000=3,500万円)
自己資金100万円の人なら、あと2,100万円しか借入できない(100+2,000=2,100万円)ということです。
つまり自己資金を証明できれば、その金額+2,000万円まで融資は可能、言い換えれば自己資金がなければ融資しないのです。(そこまでハッキリとは言っていませんが)
日本政策金融公庫でも同様
日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」のデータによると、
創業資金調達総額に占める自己資金の割合は約20%となっています。 (中略)自己資金と借 入金のバランスを考え、ゆとりを持った資金計画を立てることが大切です。
こちらは日本政策金融公庫ホームページで創業融資関連ページに記載されている内容です。
日本政策金融公庫も自己資金なしはムリ
日本政策金融公庫の場合、創業融資の申込基準に自己資金の条件は明記されていません。
しかしながら、引用したように日本政策金融公庫の姿勢も銀行(信用保証協会融資)と同じだということがわかります。
審査の手法、視点や考え方の基本部分は銀行も日本政策金融公庫も変わりませんので、銀行員目線で考えれば、日本政策金融公庫でも自己資金なしで創業融資を受けるのは難しいと思われます。
創業融資に自己資金が必要な理由
創業融資には自己資金が必要である、というより、
- 自己資金がなければ事業が破綻する可能性が高い
- だから自己資金のない人では創業融資を受けられない
- 創業するには自己資金が必須
と言う論法と理解してもらうのが正確だと思います。
創業してから、事業が計画通り行くとは限らず、また想定外の出費もあるでしょう。
そうしたときに対応できるだけの蓄えがなければ、資金はすぐにショートしてしまいます。
ですから、銀行や日本政策金融公庫などお金を貸す側では、自己資金なしの創業は危ういと考えるのです。
これは、創業で失敗したケースのデータが蓄積され、共有されているからです。
自己資金と言えるのは?
一部記事では、自己資金のない人があたかも持っているように見せるテクニックを語るものがあります。しかし、これは絶対にいけません!
詳しく触れると助長してしまいかねないのですが、たとえば他から借りたお金を自己資金のように装ったり、親から一時的に拝借して自己資金に見せかけたり、こうした行為は文字どおり偽装です。
一般に自己資金といえるのは、すぐに使えるお金です
たとえば
- 預金(会社名義だけでなく、社長個人口座を含む場合も)
- 有価証券(株式など市場で換金が容易なもの)
- 創業に使った資金(借りている事務所の保証金、自己資金で買った機械など)
こうした資産から、住宅ローンなど現在利用中の借入金(全額ではなく、1年間の返済額を控除するなど)を差し引いたものが自己資金と定義される場合が多いようです。
自己資金の偽装は絶対にダメです~まとめとして
創業融資の審査では、預金通帳を最低でも過去6ヵ月以上さかのぼり、お金の動きをチェックします。また借入明細も提出を求められますし、個人信用情報など借入れの内容も把握可能です。
これは一例であり、金融機関は審査段階で偽装を見抜く手段をいくつも持っています。
ですからウソは必ずバレます。そして金融機関はウソが大嫌いです。
虚偽、偽装が発覚すればその金融機関は言うまでも無く、どこからも融資は受けられなくなりますので、この点は忘れないでください。