端的に言えば、在庫=お金ですが、なぜ在庫が必要となるのでしょうか。
これは当たり前の問いなのですが、非常に重要です。
答えを端的に言えば機会損失や取引先からの信用の棄損を避けるためです。
目次
在庫は必要である
一口に在庫と言っても、業種によって様々ですが、
製造業:部品、原材料、仕掛品、半完成品、完成品
小売業:商品
があります。製造業の会社では、上記に挙げた在庫をすべて持っていることも多いです。
なぜ在庫の管理が必要か、ある製造業A社の例を挙げて説明します。
A社の場合、取引先から要求されている完成品を製造する計画を立てており、それを製造するための部品が必要となります。しかし、部品によっては確保するまでに時間がかかるものがあったり、急な増産要求があったりする場合などを考慮すると、ある程度在庫を確保しておく必要があります。
一番やってはいけない事は、部品がないために要求されている完成品数を製造・出荷できない事です。
一度でも出荷できなかったらどうなるでしょうか。調達元の会社では、販売計画や製造計画に基づいてA社に発注している訳ですから、計画通りの納入がなければ、その計画が立ち行かなくなってしまいます。最悪損害を与えることになります。
それだけならまだしも、サプライチェーン全体が影響を受けてしまうこともあり得ます。それだけ責任が重大であり、要求通りの製造・出荷ができなければ、取引先との信頼関係も失ってしまうということなのです。
それを防ぐために、部品などの在庫の管理を行うのです。
在庫を持ち過ぎる弊害
では、足りなくなるくらいなら多く在庫を抱えておけばいいのでは、と思ってしまいがちですが、在庫を無駄に多く抱えてしまうと実に多くの問題を抱えてしまいます。
在庫を持ち過ぎるデメリット
- 在庫を揃えるためにはお金が流出する。在庫金額が100万円ある場合は、お金も100万円無くなっていると言える。更に、売り上げになるまでに時間が必要なため、現金化までの運転資金が必要となる。
- 在庫も種類によっては劣化や破損、陳腐化が発生する。
- その在庫が売れなくなってしまった場合は、不良在庫となる。
- 管理コスト(倉庫代、家賃、保管にかかる人件費など)が余分にかかる。
- 棚卸に時間がかかる。
などのデメリットがあります。
つまり、在庫は多すぎても少なすぎてもダメで、会社への利益貢献のためには、適切な在庫管理が必要となります。
在庫が資金繰りに及ぼす影響
在庫がどの様に会社の資金繰りに影響するのかをより詳しくみていきます。
会社は赤字になっても倒産しませんが、お金(キャッシュ)が無くなり支払いが出来なくなると、倒産してしまいます。
資金繰りに行き詰って倒産する会社は非常に多いのですが、その中でも大量の在庫を抱えて倒産するケースが非常に多くみられます。
仮に、余剰在庫100万円とした場合、管理コスト15%として115万円(100+15)分のお金がなくなる事となります。
そして、この管理コストですが、固定費化することから非常に厄介な代物と言えます。多くの場合、倉庫代、家賃ですが、月々に資金が流出することから、確実に資金繰りの悪化要因となります。不良在庫がワンフロアを占有することで、年間数百万円もの家賃を払っているケースもあります。
なお、倉庫代・家賃ですが、他社(元請け)の在庫を置いているような場合、費用を請求できる場合もあります。
ですから、余剰在庫自体を減らすことが必要なのです。机上の計算ですが、余剰在庫を半分の50万円にできれば57.5万円と、半分に抑える事ができるのです。
在庫金額を把握するためには
製品点数が10~20であれば、全て把握する事は難しくはありません。
しかし、実際に事業をしていると何百点と点数が多くなりますので、それらすべてを管理しようとするとそれに伴うコストが増加します。在庫管理システムがあればまた別ですが、そういうシステムを導入するにはお金がかかります。また、仮にそういったシステムを導入したとしても、RFIDがない限り、棚卸はバーコードリーダー等を使って人がやらなければなりません。更に、システムのデータ(理論在庫)と実在庫の数を合わせるために(理論在庫と実在庫が乖離すると、実質的にシステム化している意味がなくなります)、在庫が出荷・販売されればシステムに入力するなどの、細かい作業が発生します。
ですので、まずは最低でも、管理すべき在庫と、管理が甘くても大丈夫な在庫に分けることが必要になります。例えば値段の高い製品や、注文があったら即納品しなくてはならない製品については、管理すべき在庫とします。
一方で、お取り寄せなど、顧客が待つことが前提となる在庫の場合は、管理が甘くても大丈夫な在庫にします。
管理すべき在庫については、定量若しくは定期、またはその両方で在庫数量と在庫金額(購入単価×数量)を捉えます。そして、毎月1日に必ず発注・製造するだとか、ある一定の在庫数量を下回ったら、発注・製造するという形になります。
管理が甘くても大丈夫な在庫については、なくなったら発注するなどで対応します。
在庫を把握するための経営指標は
一般的には、在庫回転率という指標が使用されます。回転率が多いほど在庫購入から販売までの期間が短いという事です。
計算式は「売上高÷棚卸資産(期首在庫高+期末在庫高)÷2」です。
この回転率が高い、つまり少ない在庫で沢山の売上を上げられればとても経営効率が良いということです。
例えば、アマゾンの在庫回転率は、12回、つまり30日で商品が入れ替わると言われています。
逆にこの回転率が低いと、在庫が滞留しているということです。つまり、不良在庫の存在が疑われます。
大塚家具は3回程度と言われていますから、業態的な特性もありますが、在庫が滞留する期間も長くなっています。先日、第三者割当増資を行いましたが、それだけ資金繰りも逼迫していた可能性があるということです。
在庫回転率は、業種によって変わりますが、この回転率を上げるためには、必然的に不良在庫をいかに減らしていくかが重要になります。
在庫回転率を統計的にとらえ、自社の適正回転率を定め、それ以上を超えるような場合、仕入を調整するといった方法を行うことで、資金繰りを改善することができます。
この詳細は別の記事と致します。