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借入金を返せなくなったらどうする?どうなる?(2)~期限の利益喪失とは?
借入金を返せなくなったらどうする?どうなる?(2)~期限の利益喪失とは?

第1回リスケでは「元金返済は無理だけど、利息10万円だけなら払える」といったように、条件付きでも返済できる状態ならリスケ対応をして、少しずつでも返済していくことをお話しました。

しかし今回は、返済を続けていくことができなくなるというお話しです。

これには2つのケースがあり、1つ目は「もう払えなくなったから、返済していくことができない」、そして二つ目は「自分では融資を返済していきたいのに、返済させてもらえない場合がある」です。

こうした、返済を続けていくことができない状態になることを「期限の利益喪失」といいます。

少し難しい言葉が出てきましたので、まず言葉の意味を説明し、そのあと2つのケースについてお話ししていきます。

目次

期限の利益喪失とは?

融資は顧客(債務者)と銀行(債権者)の契約によって成り立っています。債権者にはノンバンクや消費者金融、カード会社や保証会社も含まれ、それぞれの契約も銀行事業資金融資と同じく「契約」です。

契約である以上、双方が守るべき約束ごとがあり、それを条件と言います。例えば銀行事業資金融資の条件は主に次のようなものがあります。

銀行事業資金融資の条件~銀行との約束ごと
  • 毎月決められた返済日に元金と利息を返済する
  • 毎年決算書を持参するなどして業況を継続的に報告する
  • 業況悪化などで、銀行から担保や保証人の追加を求められたら応じなければならない

こうした約束ごとは、借用金証書(金銭消費貸借契約証書)などの契約書に必ず記載されています。

読んでお分かりのとおり、当たり前のことが書いてあります。

ただ、この当たり前を当たり前にできることが大事なのです。毎月決められた返済日にしっかり返済していき、銀行との約束ごともちゃんと守る、そうすれば借入期間5年の借入は5年でゆっくり返済していけるのです。

言い換えると、5年返済の借入でも、銀行との約束を守れなかったら即刻全額返済しなければならないということになります。

この「約束を守れば5年で返済できる」というのが「5年という期限の利益がある」ことで、「銀行との約束を守れなかったら即刻全額返済」というのが期限の利益の喪失という意味になります。

期限の利益喪失は2種類ある~「当然喪失」と「請求喪失」

期限の利益喪失には「当然喪失」「請求喪失」の2種類があり、簡単な意味は次の通りです。

期限の利益喪失2種類とその意味
  • 期限の利益当然喪失:当然に即刻期限の利益を喪失すること
  • 期限の利益請求喪失:債務者から請求されたあとで、段階的に期限の利益を喪失すること

当然喪失、請求喪失ともに、それぞれその原因となることが決められています。

当然喪失のほうが事態は重く、原因となる状況も重いものです。

まず、当然喪失からお話ししていきます。

期限の利益が当然喪失となる原因とは?

期限の利益当然喪失となる原因としては主に次のものが挙げられます。

期限の利益当然喪失となる原因
  • 預金や担保不動産に差し押えがあったとき
  • 手形不渡りなどで銀行取引停止処分になったとき
  • 自己破産や会社更生手続開始となったとき

これらは全て債務者にとり非常に由々しき事態で、したがって債権者である銀行にとっても融資金が回収できなくなるリスクが高まることになります。例えば銀行取引停止処分はいわゆる倒産で、こうした事態があれば返済はまず不可能です。そこで上記のような事態になった場合、期限の利益は当然喪失となります。

実務的にいうと、当然喪失の場合、債務者に連絡すること無く債権者が即刻処理をします。追加融資ができなくなるのはもちろん、銀行口座全て凍結されてしまいます。また銀行が必要と判断すれば担保になっている不動産に差し押え登記をしたり、保証人の財産も差し押さえしたりする場合もあります。

このように銀行にとっては債権者として、融資金回収のため即座にあらゆる対処をしなければならない非常に重い事態が期限の利益当然喪失です。

期限の利益が請求喪失となる原因とは?

「債務者から請求されたあとで、段階的に期限の利益を喪失する」のが期限の利益請求喪失です。

当然喪失に比べ時間的余裕がありますが、余裕があるというだけで事態は軽いというわけではありません。

こちらの原因にもいくつかありますが、最大のものは「延滞」で、他の説明は省きます。

毎月決められた返済日に元金と利息を返済する、という銀行との約束ごとが守れなければ期限の利益は喪失します。

返済が苦しくなっても、返済軽減のリスケをしてもらう(第一回リスケ参照)など、銀行と話し合っていければ問題はありません。しかし返済を拒む人や督促しても応じない人、あるいは所在不明などで延滞が嵩んだ場合、銀行から何度か文書が送られたあとで、それでも返済しなければ期限の利益が喪失されます。

文書は①「督促状」に始まって②「期限の利益喪失予告(いついつまでに払わないと期限の利益を喪失するという予告)」そして最後は③「期限の利益喪失通知(お知らせした期日までに支払が無かったので、〇月〇日をもって、あなたは期限の利益を喪失しました)」といった流れになります。

そして③「喪失通知」では即座に全額返済を求める内容になっています。

当然喪失は一方的に銀行(債務者)が処理して事後に通知があり、請求喪失では前もってお知らせ、予告があって、それでも応じなければ期限の利益を喪失するという違いです。この場合、文書は全て内容証明郵便で送られます。原則受取拒否できませんし、銀行は郵送したという事実があれば良いので所在不明や転居で受取られなかったとしても問題無く処理を進められます。

まとめ~喪失されたらおしまいです!

差し押さえや自己破産などは、期限の利益を喪失したことより、それ自体が非常に重い事態です。

また請求喪失にしても、そこに至るまでの間何も反応が無く期限の利益が喪失となった人はその経緯が永久的に記録されます。その銀行で融資取引することはもう不可能です。

当然喪失になってしまうような事態にならないよう、また銀行からの文書は無視せずに、相談できるなら相談をするという姿勢が大事でしょう。

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