今回は経営者保証について解説します。
- そもそも経営者保証とは?
- 新規融資で経営者保証を求められないケースとは?
- 借入中の融資で経営者保証を外せるケースとは?
この3点に絞り解説します。
目次
経営者保証とは?
経営者保証とは、経営者が融資の保証をすることです。
個人事業主では経営者=債務者なので経営者保証という表現が当てはまりません。
中小企業が融資を受けるときに経営者、つまり社長が融資の保証人になるのが経営者保証のイメージです。
この経営者保証が、中小企業の資金調達で重荷になり、さまざまな弊害が出てきたので「経営者保証に関するガイドライン」というルールを定めて改善しようという動きが出てきました。
経営者保証に関するガイドラインとは?
「経営者保証に関するガイドライン」は、平成26年に金融庁と中小企業庁の主導で決められたもので、経営者保証なしでも融資を受けられる道が示されています。
その内容は
- 経営者保証がなくても融資を受けられる条件を明示する
- 廃業などでは、融資した銀行は経営者に一定の生活費を残すこと、あるいは「華美でない自宅」に住み続けられる可能性を検討する必要がある
といったように、経営者を一定の範囲で保護するものです。
実務的には、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を母体とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」でまとめられました。
「ガイドライン」とは法令ではないが守るべきルール、といったニュアンスで、法的な拘束力はなくても金融機関はこのガイドラインに従っています。
なお経営者保証やガイドラインは対象となる中小企業者の条件など細かく決められています。以下の政府広報パンフレットで確認してください。
政府広報オンライン/平成30年(2018年)4月27日/中小企業や小規模事業者の方へ ご存じですか?「経営者保証」なしで融資を受けられる可能性があります
新規融資で経営者保証を求められないケースとは?
新規に融資を受けるときに経営者保証を求められないケースはいくつかありますが、代表的な2例を紹介します。
求められないケース1
1つ目に紹介するのは、事業計画を評価して、経営者保証を求めないケースです。
融資審査で、経営者保証がなくても融資できるか?銀行が検討した結果、下記のポイントが評価され経営者保証なしで融資が可能と判断しました。
- 事業計画の実現可能性は高いと考えられる
- 事業計画には銀行融資が必要不可欠という結論には妥当性が認められる
- これまでも、毎月必ず資金繰りや業況報告を欠かさず、信頼が置ける
しっかりとした計画があり、以前から銀行と良好な関係があったことが要因です。
求められないケース2
2つめは「解除条件付き」で融資した例です。
解除条件は「それを達成したとき解除(効力が消滅する)となる条件」のことです。
もう少しわかりやすく表現すると
「○○ができなければ解除」融資を受けられなかったら売買契約は解除できるという、売買契約のいわゆるローン条項と呼ばれる特約
「××できたら解除」は、これから説明する内容で、経営者は融資の保証人になるが、条件を達成したら解除(経営者保証がなくなる)となる契約です。
銀行は、経営者保証を求めない融資が可能か検討しましたが、業況などから現時点での経営者保証なしでの融資はできないと判断しました。
しかし、下記のように条件を提示し、その条件を達成できたなら経営者保証を外すと判断し、融資をすることになったのです。
- 一定期間、毎月試算表など財務諸表を提出して業況報告を欠かさないこと
- 今後の2 期連続で、自己資本比率を 30%以上確保すること
他にも条件を付けられましたが、頑張って条件をクリアしたら経営者保証を外してもらえる、と励みにもなる契約です。
借入中の融資で経営者保証を外せるケースとは?
借入中の融資(既存融資、既往融資とも)でも、条件を満たせば経営者保証を外せるケースがあり、こちらも2例紹介します。
外せるケース1
コベナンツ付き融資で経営者保証を外したケースです。
コベナンツとは「約束、誓約」といった意味で、上記した解除条件に似ていますが、もっと厳しい意味があります。
コベナンツになると、銀行との厳密な約束ごとであり、違反すると最悪期限の利益喪失といって、全額返済を求められても拒否できない強い効力があります。
紹介した例では、借入中の運転資金を増額して継続し、財務制限条項(財務制限コベナンツ)を定めることで、経営者保証を外ししました。
財務制限条項は、「今後5年以内に営業利益を現在より30%上乗せする」
といった利益目標でした。
利益をあげるのは会社の宿命であり、経営者は前向きにとらえ努力しています。
外せるケース2
前経営者の影響力を排除する目的で、経営者保証を外したケースです。
借入期限が到来した融資があり、継続しようと相談に来たのは新社長で、従業員から社長に上り詰めた生え抜きです。
しかし今回の融資も含めて、前社長が保証する融資が残っていたため、良くも悪くも影響が残っていたのです。
会社は業況も良く、新社長の手腕で今後の成長も期待できたため、今回すべての借入を見直し、前社長の経営者保証を外し、しかも新社長の保証なしにすることになりました。会社の将来性を銀行が評価した結果です。
まとめ
経営者保証は企業の自由な資金調達の足枷となっている、という考えが発端でガイドラインが定められた経緯があります。
しかし、経営者が会社の責任を負い、文字どおり経営責任を全うしてこそ企業の発展があるわけです。
経営者保証のガイドラインにより、仮に融資の保証はしなかったとしても、その責任は免れるものではありません。
この点は、ぜひ覚えておいてください。