今回はリスケについてもう少し深掘りした解説をしたいと思います。
事業を継続していくうえで、経営者の多くが抱く疑問
「リスケ中でも追加融資を受けることが可能か?」
こちらについて専門家が解説します。
目次
リスケ期間中でも銀行から融資は受けられるのか?
結論から言うと「可能」です。
今まで、リスケ中に追加融資を受けることは、絶対ムリと言えるほど困難でした。
では、どうして現在はリスケ中でも追加融資が可能になったのか?
まず背景を理解するため、これまでと最近の変化についてお話しします。
最近はOKになった理由
これまでダメだったという理由は、とくに難しい話しではありません。
借金を返せない人に追加融資はできないという、ある意味至極シンプルな理由です。
返済ができなくなったからリスケ対応をしているのであって、その人に追加で融資しても、返済ができる見通しが立たない、だから貸せません、というわけです。
「金融仲介機能を維持し、預金者を保護するために、貸出条件緩和債権を保有する債務者に追加融資はできない」銀行的文書表現ならこうなるでしょう。
今までは金融仲介機能維持のため、返せない人には貸さなかった
金融仲介機能とは、預金を融資し、金利と一緒に回収し、満期で預金を返すという、いわば銀行業務の基本です。
融資金が回収不能になれば、預金も返還できなくなるので、金融仲介機能が維持できなくなります。そのため貸出条件緩和債権を保有する債務者(貸出条件緩和債権とはリスケしている融資のこと)に追加融資はできないという論法です。
ベンチマーク向上のため、リスケ中でも追加融資をするようになった
追加融資を受けられるようになったのは行政の方針転換、国のお達しによるものです。
ここでのキーワードは「金融仲介機能のベンチマーク」です。
銀行の金融仲介機能を客観的に評価できる指標として、金融庁が公表するのが金融仲介機能のベンチマークです。
このベンチマークの中に共通ベンチマーク1(*)があります。
(*共通ベンチマークメインバンクとして取引している企業のうち、経営の改善や就業者数増加が見られた数や融資額の推移を示す)
もう少しくだけた表現をすれば
「自行がメインバンクになっている債務者で、業績が改善したり従業員が増加したりした企業は何件あるのか?」
「これらの債務者に対し、どれだけ融資残高を増やしたのか?」
という数値です。
ベンチマーク数値が向上した銀行は金融仲介機能を発揮している良い銀行で、向上してない銀行は金融仲介機能を発揮していないダメな銀行、と金融庁から公表されてしまうのです。
前置きが長くなりましたが、ベンチマークを向上させるには、リスケ融資を減らすのが最も近道です。またリスケ中の債務者に追加融資をすることでもベンチマークは向上します。
こうした背景で銀行は「借り換え」と「条件付きの追加融資」をするようになったのです。
リスケ中に融資を受けた2つの例
では、具体的にリスケ中に追加融資を受けられた2例を紹介します。
「信用保証協会融資の場合」は借り換えプラス追加融資
信用保証協会の保証付き融資(略してマル保融資、以下マル保融資)では、原則としてリスケ先への追加融資は取り扱いません。
マル保融資をリスケしている場合は、そのリスケが終わるまで追加融資はしないのが、保証協会の大原則です。
しかしリスケ中も追加融資は可能で、それが借り換えプラス追加融資です。
例えばリスケ中マル保融資に追加融資して借り換え(リスケ中のマル保融資は返済)してしまうものです。(増額部分を銀行や保証協会では「真水(まみず)」と呼ぶ)
「プロパー融資の場合」は条件次第で新規融資もする
ベンチマークの説明で、どれだけ融資残高を増やしたのか?が銀行評価の尺度になると説明しました。
そこで数値向上のため、最近ではリスケ中でも銀行が追加でプロパー融資するようになりました。
ただしリスケ中の追加融資なので条件はかなり狭き門です。
あまりに業績が悪く、将来的な見通しが立たない場合や、リスケしてなお延滞している企業では追加融資はしてもらえません。
まとめ~銀行の対外的アピールの側面も
銀行はリスケ先に対する姿勢を対外的にアピールしています。
たとえばリスケ先へのプロパー融資も、中小企業など困っている債務者を支援する姿勢としてホームページ等で公表しているのです。
融資の内容は銀行によって違いますが、「この融資が経営改善には不可欠」といった大義名分は共通しています。そこで、経営改善計画が必須条件になってきます。
たとえば独自のプロパー融資を1千万円借り、その融資で売上げや利益を回復し、だから当社は立ち直る、といったシナリオが必要になるのです。明確な時期や利益の額などを盛り込んだ経営改善計画が義務づけられます。