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困った時に助けてもらえる銀行との良い付き合い方とは

目次

銀行との良い関係づくりが必要

銀行で応接室に通される社長とそうでない社長がいる

IT分野の成長によって、インターネット専門銀行やATM網、クラウド、インターネットバンキング、スマホ決済など金融機関の実店舗窓口に来店しなくとも、ほとんど用事が済んでしまう世の中になりました。しかし、個人レベルではそうかもしれませんが、法人レベルになるとまだまだそこまでのレベルには達しておらず、週初めや月末は窓口が煩雑になるという光景はよく見られます。

私も数々の中小企業を見て来ましたが、銀行が忙しい時でも行った際には必ずと言っていい程応接室に通されて支店長と話をする社長と、そのような事が一度もない社長がいます。

突発的な資金需要はいつでも起こり得る

金融危機や地震による大災害とそれによる企業倒産は記憶に新しいところです。業績は堅調であっても、突発的な事業停止などにより運転資金が枯渇するということはいつでも起こり得ます。

また、イケイケドンドンで会社が成長していた会社の業績が急速に悪化した場合、何かしらの資金手当が必要になります。

このような状況になった時に、銀行との関係が悪化していたり、そもそも銀行との関係がなかった場合、銀行は助けてくれるでしょうか。そっぽを向かれることもあり得ますし、稟議に時間がかかることで、支払いに間に合わないということもあるでしょう。

銀行員も人間であり、企業との関係性は少なからず判断に関係するのです。この記事では、どうすれば金融機関との取引を円滑に運べるのか幾つかのポイントを挙げたいと思います。

金融機関と中小企業の考えの違いを理解する

まず、前提条件として金融機関側と中小企業側の決定的な考え方の違いがあります。

中小企業側からすれば、「(金融機関側は)自分の会社の事なんか何も分かんないんだから、細かい事言わないで、貸してほしい時に貸してくれ」というのが率直な考えではないでしょうか。

基本的に借りる側は、将来的に返済できなくなる事は考えないで話をします。しかし、金融機関は全く逆の考え方をします。

返済できなくなる時の事を考えて話をするのです。それは当然です。預かっているお金を借りたい人に貸すのを仲介しているのが金融機関であり、その仲介手数料が金利です。貸したお金が返ってこなかったら、預けてくれている人にお金を返すためには、金融機関は自分たちでそれを補填しなければならなくなります。1万や10万でしたらあまり問題ないかもしれませんが、それが1000万、1億となれば話は変わります。そのため、極力リスクを減らすために、保証協会付や担保を取るのです。

保証や担保の条件は会社の業況を総合的に判断した上で決まります。業況は定量的(数字で表せる)・定性的(数字で表せない)に判断されます。

定量的なものとして、決算書や月次試算表、資金繰り表、キャッシュフロー表、社長の個人資産などが上げられます。

定性的なものとして、ビジョンや会社の雰囲気、取引先、技術、後継者の有無などです。

しかし、悲しいかな、現在の金融機関ではほとんどが定量的な部分で決まります(スコアリング)。つまり、数値で示される過去の実績を見て判断されるため、社長がどんなに熱心に将来の事を語っても、所詮書類でしか判断しない本部の人たちにそれが伝わる事はほとんどないと考えていた方がいいでしょう。

この企業を助けたい・応援したいと思わせるには

では、中小企業側は金融機関側のなすがままで諦めるしかないのでしょうか?

決してそうではありません。「人対人」の要素も十分あります。担当者も人間ですから、「この企業を助けたい」「応援したい」と思えば、稟議を通すために頑張ってくれるということもあり得るのです。

それでは、どのようにすれば金融機関と良い関係が築けるかを挙げてみたいと思います。上記金融機関の考え方を念頭に置いたうえで、お読みください(業績の良し悪しは除きます)。

まず、結論から言うと次の4点が重要となります。

1.日頃から銀行と取引をする

「無借金経営」を自慢する社長は意外と多いものです。しかし、逆に言うと有事に無防備な企業だとも言えるかもしれません。

繰り返しになってしまいますが、自然災害や事故、事件によって、運転資金が急に必要になるということは十分にあり得ます。こういった場合に、「すぐに金を貸してくれ!」と銀行に駆け込んだとして、融資の実行まで果たして会社が保つでしょうか。

しかも、実態が良く分からない会社な訳です。融資が承認されない可能性も十分にあり得ます。

ですから、少額でもいいので銀行から融資してもらうようにしましょう。例えば、私の友人の行員からも賃貸契約の保証金などを借りておくことをオススメされています。

リスクへの備えとして、日頃から銀行と取引をするようにしましょう。

2.最低月1回以上はコミュニケーションを取る場を設ける

交渉という側面もありますが肩肘張らずにお互いの情報交換の場として考えましょう。自分の業種の動向などの情報を教える代わりに、金融機関の情報も仕入れます。

金融機関は情報も重要な資源になりますので、喜ばれること間違いないです。社長―支店長レベルだけでなく、担当―会社の経理担当でもオーケーです。

3.試算表は毎月必ず提出の上、説明する

抵抗ある方もいるかもしれませんが、これを実際にやるかどうかで相当印象は変わります。しっかりとした会社という印象は持たれる事は恐らく間違いありません。

また、常に会社の業況をオープンにしている事で、緊急的な融資の依頼がある場合でも、金融機関に最新の情報が入っていますので、スムーズに事を運ぶことができます。

4.誠実に対応する

金融機関はひとつではなく、選ぼうと思えば選べます。しかし、繰り返しになりますが相手も人間です。「貸すのが当然だ!」とばかりに横柄な態度をとっていますと、いざというとき助けてくれません。このケースは例えば、会社が大きくなって忙しいからと社長が直接対応しなくなるようなことも含まれます。金融機関側の担当者からすると嫌な気分になることは間違いありません。

逆に「どうか助けて下さい」と卑屈な態度取るのも困りものです。卑屈になっても貸せないものは貸せませんし、最初から自身の立場を弱くしてしまうようであれば交渉事としては大失敗間違いありません。

メイン、サブに関わらず「ビジネス・パートナー」と考え、同じ目線に立ち、誠意をもって対応することが重要です。

銀行と良い関係を築いた会社の事例

ある会社では、今でこそキャッシュフローは改善されましたが、以前は毎月の給料日前になると必ず資金繰りが苦しくなり、社長が役員借入という形でお金を会社に入れたり、多い時で1千万を金融機関から借入れ、月末の売上で返却するという事を繰り返していました。まさに自転車操業と言える状況でした。そのような状況は多かれ少なかれ社員に耳に入るものですので、「ウチの会社って本当に大丈夫なの?」と心配する社員もいたようです。

その後この会社がどうなったかというと、様々な改善活動により、現在資金繰りは安定するようになっています。

この会社では、上記①~③をしっかりと実践することで、「金融機関との良い関係」を築きました。

また、今の金融機関の担当には、そこまで特定の会社に入り込んで改善をする能力や労力はありません。金融機関に過度な期待を抱かない方が、後で「困った!」ということがなくなります。

この会社でも「上手く利用してやる」というスタンスで臨んだことも良い関係を築くことに一役買っています。

まとめ

銀行と良い関係を築くためには以下の4点が重要です。

  1. 日頃から銀行と取引する
  2. 最低月1回以上はコミュニケーションを取る場を設ける
  3. 試算表は毎月必ず提出の上、説明する
  4. 誠実に対応する

業績を上げるということが重要なことに変わりはありませんが、突発的に運転資金が必要になるということは大いにあり得ます。このような困った時でもお金を貸してくれるように日頃からの「人対人」の関係に気をつけることが重要です。

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