新型コロナ感染症による資金繰り悪化を食い止めるための公的な助成金、補助金、施策を紹介していたいと思います。
色々あり過ぎて何をやったら良いのか分からないという方が多いと思いますので、資金繰り改善という視点でまとめてみました。ご参考になれば幸いです。
なお、現在次々と支援策が打ち出されている状態であり、漏れは発生している可能性もあります。
最新情報は、経済産業省のサイトで確認できます。
https://www.meti.go.jp/covid-19/
パンフレットも随時更新されていますので、ご確認下さい。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
目次
リスケ
令和2年3月6日付で、麻生太郎大臣が金融機関向けに中小企業への資金繰り支援を要請しました。
これは、既往債務と新規融資について言及があります。
まず、既往債務については、リスケに応じるよう具体的に要請しています。
既往債務について、事業者の状況を丁寧にフォローアップしつつ、元本・金利を含めた返済猶予等の条件変更について、迅速かつ柔軟に対応すること
そして、中小企業庁は令和2年4月1日に「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール実施要領」を制定しています。
これは簡単に言うと、中小企業再生支援協議会が中小企業と金融機関の間に立ってリスケの調整をするというものです。また、つなぎ融資のための金融調整も行ってもらえます。リスケやニューマネー調達の可能性が高まることが期待されます。
要件としては、「最近1ヶ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した者」となっています。
借り換え
リスケを行った場合は、原則的に新規融資が受けられなくなります。
現在のように先の見通しが不透明な状況下では、リスケで一定期間返済を止めるよりも、既存債務の一本化や借り換えによる返済期間の繰り延べと据置期間の設定の方がリスクが少ないと言えるでしょう。
このような手法はDDSと言われ、月々の返済額を減らすことができるメリットがあることから、以前からよく使われています。
例えば、返済期間5年で借りている資金を、返済期間10年で借り直すことで、月々の返済額はざっくり2分の1となります。
下記のセーフティネット保証4号と5号と自治体の融資あっせんを組み合わせて借り換えを行えば、金融機関にとってもリスクが少なく、各所に非常にメリットがあります。
例えば、埼玉県では「緊急借換資金」という施策を令和2年4月1日から開始しています。
これを使えば、最大1億5,000万円まで信用保証協会の保証付き融資に借り換えることができます。要個人保証・担保はケースバイ・ケースになりそうです。※セーフティネット保証4号・5号の利用もできる可能性があります。
要件は、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、売上高等が過去3年のいずれかの同期に比べて減少している」ことで、%の要件はありません。
また、日本政策金融公庫の既往債務については、新型コロナウイルス感染症特別貸付や商工中金の危機対応融資に借り換えすることで、実質無利子化することも可能になりそうです(令和2年度の補正予算の成立による)。
新規融資
現在、政策金融による資金繰り支援策が打ち出されており、有力な選択肢となります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
最近1ヵ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少している場合に、対象となり、設備資金と運転資金を借りることができます。
限度額は、国民生活事業6,000 万円、中小企業事業3億円となり、別枠かつ無担保です。
返済期間は、設備資金 20年以内、運転資金 15年以内で据置期間は5年以内で設定できます。
一定の条件を満たせば、下記の「特別利子補給制度」で3年間は実質無利子でお金が借りられますので、据置期間を併せて設定すれば資金繰りの強力な味方になります。
出典:https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_faq_jisshitsumurishika.pdf
特別利子補給制度
この融資制度には特別利子補給制度があり、以下の要件を満たせば3年間は利子補給が受けられます。
- 個⼈事業主(事業性のあるフリーランス含み、⼩規模に限る):要件なし
- ⼩規模事業者(法⼈事業者) :売上⾼15%の減少
- 中⼩企業者(上記➀➁を除く事業者):売上⾼20%の減少
詳細は今後発表される予定です。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
商工会議所、商工会の指導が前提となりますが、新型コロナ感染症の影響で最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少であれば、通常の融資とは別枠で1,000万円の融資が受けられます。
ご存じの方も多いと思いますが、この融資の特徴は無担保・無保証である点です。
また、当初3年間の金利は、1.21%-0.9%=0.31%となります。
返済期限は、設備資金10年以内(据置間4年以内)、運転資金 7年以内(据置期間3年以内)となります。
まずは、商工会議所若しくは商工会に問い合わせるようにして下さい。
セーフティネット貸付
これは、経営環境変化対応資金とも言われているもので、売上の要件が緩く、上記の要件に合わない事業者でも融資が受けられる可能性があります。
とはいえ、融資は一般枠の中で行われます。担保・保証人も応相談というものですので、上記の融資を先に検討することをお勧めします。
地方自治体(市区町村)の融資あっせん
市区町村によっては、融資のあっせんを行うところもあります。
東京都台東区の例で説明しますので、別の市区町村に本店や営業の本拠地のある事業者の方は別途当市区町村にお問い合わせ下さい。
「台東区新型コロナウイルス感染症対策特別資金」の融資あっ旋は、500万円以内の運転資金を融資するというものです。利子は0.4%、貸付期間は5年以内(据置期間は6ヵ月以内で設定)です。
この手の施策の特徴は、信用保証協会(当制度では東京信用保証協会)が保証をして、地域の金融機関が融資を実行、行政は利子と信用保証料を補助するという形を取ります。
当制度では、1.9%の利子のうち1.5%を台東区が補助、信用保証料が全額補助されます。
信用保証協会の保証限度額まで既に借り入れていると不安になる方もいるかと思いますが、新型コロナ感染症対策として「セーフティネット保証4号、5号」を活用すれば、別枠で保証枠を設けることができます。
この保証枠ですが、セーフティネット保証4号、5号で異なりますので、比較表を載せておきます。
4号 | 5号 | |
対象地域・業種 | 指定地域において1年間以上継続して事業を行っていること(現在47都道府県) | 指定業種に属する事業を行っている |
売上等の要件 | 原則として最近1か月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること(売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要) | 最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少(その他省略) |
保証割合 | 100%保証 | 80%保証 |
保証限度額 | 一般保証とは別枠で2億8,000万円(4号と5号は同じ枠となる) |
このように、4号は5号と比べるとやや売上高の要件が厳しめですが、保証割合が100%と有利になっています。
なお、申請の手順としては、
- 取引のある金融機関又は最寄りの信用保証協会に相談
- 本店等(個⼈事業主の⽅は主たる事業所)所在地の市区町村に認定申請を⾏う
- 希望の⾦融機関⼜は最寄りの信⽤保証協会に認定書を持参し、保証付き融資を申し込む
ようになります。
また、保証対象業種に限られますが、危機関連保証という一般保証とセーフティネット保証の保証限度額とは更に別枠で借入債務の100%を保証する制度もあります。限度額は2.8億円です。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は以前から一般的に使われている厚生労働省の助成金で、固定費の多くを占める人件費を軽減することができ、資金繰り上で非常にメリットがあります。
「NEWS23」の報道によると、ハローワークの相談件数は1日に150~160件、多い時は3時間の待ち時間とのことです。また、「NHK」の報道によると5/11時点で、事業者からの申請は1万2857件、支給は5054件とのことです。
今後窓口体制が1500人から3900人に拡充され、5月中旬からオンライン申請はじまりますが、当助成金については直近の資金繰りには当てにしないことをお勧め致します。
2020年4月9日現在では不明な点も幾つかありますが、新型コロナウイルス感染症対策のための特例措置(4月1日~6月30日まで)が講じられています。
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200323008/20200323008-1.pdf
簡単に説明すると、売上高や生産量が1か月5%以上低下していれば、対象となります。中小企業が受け取れる助成の金額としては、
- 休業手当負担額
- 教育訓練を実施した場合、賃金負担額の相当額
何れかに9/10(解雇なし)か4/5(解雇あり)を掛けた金額になります。但し、教育訓練の場合は2,400円の加算となります(今後金額が加算される見込み)。
こう書くと非常に素晴らしい助成金に見えますが、今(2020年4月9日現在)のところ上限額が明確になっていません(コロナ以前は、受給額は1人1日あたり8,330円が上限)。
なお、教育訓練による加算金を除くと8,330円が上限となります。
→(追記)今後休業した場合の上限が15,000円に拡充される見込みです。
事業者としては持ち出しが気になるところだと思いますので、休業のケースと教育訓練のケースでシミュレートしてみます。
なお、3.11直後は、中小企業の場合は「中小企業緊急雇用安定助成金」と呼ばれて大企業と区別されており、9/10(解雇なし)か4/5(解雇あり)の助成、教育訓練6,000円加算という内容でした。
従って、当時は教育訓練をすれば1人1日あたり上限額7,730円+6,000円=13,730円貰えていたことになります。しかし、案の定の不正受給が乱発し(判明しているだけで10億円以上にのぼりました)、そもそも今回は集合研修が難しいことから、同じような建付けになることは期待できないでしょう。
→(追記)今回の特例の拡充ではインターネットによる自宅での教育訓練も可能になりました。
更に今回の措置により、事前の計画を出さなくても休業ができるようになりました。また、気になる受給までの期間ですが、元来は通常2カ月のところ1ヵ月で受給できるようになるとの話もあります。
事前相談なしでは難しいと思いますので、ハローワークにご相談下さい。なお、現在大変混みあっているようです。十分な感染対策を施すことをお勧めします。
税金の支払い猶予・還付
納税の猶予
納税によるキャッシュ流出は資金繰り上に非常に大きな影響をもたらしますが、税務署に申請することにより、1年間の納税が猶予及び延滞税が免除されます。担保も不要です。
前年同期比概ね20%以上の収入減少が要件となりますが、対象の税は、法人税や消費税、固定資産税など、基本的にすべての税となります。
欠損金の繰戻し還付
前年度黒字で今年度赤字となった場合、前年度に納付した法人税の一部を還付してもらえます。
計算式は、前事業年度法人税額×当年度の欠損金額÷前事業年度の所得金額となるとのことです。
給付金
持続化給付金
これは、中小企業だけでなく個人事業主も給付金が貰えるという制度です。
新型コロナ感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少していることが要件となります。
給付額の計算式は、前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)ですが、限度額があり、法人は200万円以内、個人事業主は100万円以内の支給となります。
重要な点は、50%減となった月とは「2020年1月~12月の間のひと月」だけということです。このひと月を証明できさえすれば良いので、非常にハードルは低い給付金です。
受給までの期間は、1~2週間と言われています。
→(追記)2週間程度で振込が行われる旨がありますが、(追記)5/1の申請受付後、5/8に振込が確認された事業者もいます。
つなぎ資金として是非とも活用していただきたいところです。
https://www.jizokuka-kyufu.jp/
都道府県の補助・助成金
都道府県からの休業支援金も見込めます。
例えば埼玉県では「埼玉県中小企業・個人事業主支援金」という制度ができました。
これはいわゆる休業補償であり、
令和2年4月8日から令和2年5月6日までの間に20日以上、埼玉県内の事業所を休業していること
が要件になりますが、
20万円(県内の複数事業所を休業している場合は30万円)が支給されます。
市町村の補助・助成金
市町村の支援金もありますので、チェックをするようにしましょう。
例えば、川口市では「川口市小規模事業者等事業継続緊急支援金」という制度ができました。
これは要件があまり厳しくありません。
2020年2~6月のいずれかの月の売上高が前年同月と比較し、少しでも減少となっている
であればOKです。
支給金額は10万円ですが、光熱費や通信費等の支払いの足しになると思います。
まずは資金繰り表を作りましょう
いずれにせよ、資金繰り表を作ることをお勧めします。
大きな理由は、
- 大きな資金流出が発生するポイントを可視化できる
- 手元資金が減る時期や水準が予測でき、必要な調達資金額が明確になる
です。
この際だから借りれるだけ借りちゃおうというのはいたずらに利息ばかり払うことになりかねませんので、基本的におススメしません。極力必要なだけ借りるようにしましょう。