読んでおきたい

会社の運営をする上で、金融機関との交渉は欠かせない業務の一つです。口座の開設、公共料金の引き落とし、給与振り込み、その他支払業務など、銀行の業務は自動化され銀行員の数は今後減ると思われますが、銀行の機能としてはまだまだ取って代わられる事はないでしょう。

その金融機関との取引の中で、両者とも気をつかうのが融資取引についてでしょう。最初に挙げた取引は既に存在するものを使って取引しますので、誰でも対応可能です。しかし融資となると話は変わります。なぜならほぼ100%保証がない事案に対し、お金を貸し借りし、それを返済する計画の相談をする訳ですから、今日相談して今日借りられる、という簡単な話ではありません。

なぜなら、融資金の原資は、金融機関の金ではなく、預金している人の金になります。金融機関からすれば預金者の金を融通する訳ですから、例えば1000万円の融資金が返済されなかったとしても、預金者にそれを負担させる訳にはいきませんから、その滞った1000万円は金融機関のマイナスになります。だから、返してもらえるかどうかの審査や返済されないリスク軽減のために、保証人や担保などを取るのです。

「融資金の原資=預金者の金」という所がミソです。

では、その主に融資の相談(バンクミーティング)に臨む際の注意点について、スタンスによって違ってくる部分がありますので、

  1. 会社業況の良し悪し(キャッシュフロー)
  2. 借入内容の違い(設備or運転)

で分けて述べます。

目次

バンクミーティングに臨む上での心構え

まず共通点としてバンクミーティングに臨む上で大切な心構えとしては、金融機関の担当者を落とすというよりは、相談していいアイデアを引き出す方が絶対的にその後の取引にいい影響があります。担当者にとっては数ある取引先企業の一つですので、担当する会社の事をすべてわかっている訳ではありません。そこに「全然ウチの事を分かっていない」と腹を立てていては、話が進みません。むしろ教えて上げるくらいの余裕があった方がいいです。

また、変にへりくだる事もやめてください。どちらが偉いという事はなく、お互いがお互いのために必要な存在ですので、会社運営上で必要な利害関係の一お客さんだと思って対応して下さい。

最後に、金融機関の担当も人間ですので、自分がされたら嫌な事は嫌ですし、逆に相手の想像を超えた対応をすれば、相手からの評価も上がるものです。何回も同じ資料を求められるという事もありますが、内心では舌打ちしていいですので、外見上は誠実に対応してください(限度を超えた場合は怒っていいと思いますが)。

バンクミーティングに臨む際の必要書類

書類としては最低限以下の書類は必要です。

  • 設備投資の場合:見積書(相見積り)、設備のカタログ、設備投資による効果が分かる月次資料(キャッシュフローへの寄与(減価償却費や利益の貢献金額)がわかる表など)
  • 運転資金の場合:月次資金繰り表、(短期の場合:返済の原資となる注文書など)
  • 共通:直近の試算表

聞き取りで金融機関の担当が作る事もあるかもしれませんが、基本的には会社で作成するべきです。

次に会社業況の良し悪しの違いでの注意点を述べます。

会社業況が良い場合は過大な設備投資に注意

設備資金の場合

基本的には、必要書類さえ準備できれば問題なく審査は通りますが、会社の規模に見合わない過大な設備投資の場合は、それによるキャッシュフローに対する影響はしっかりと捉えておく必要があります。

運転資金の場合

キャッシュフローに問題がない時には、運転資金の借り入れをする必要はないと思いますが、中には「会社の調子がいい時に借りられるだけ借りておこう」というスタンスの代表者もいます。

その場合、金融機関の方でも適当な資金使途(買掛金支払や人件費支払など)で長期資金で借りさせる(運転資金は短期資金で対応するのが基本)ケースがあります。リスク回避の気持ちも分かりますが、これはあまりおススメしません。

なぜなら、これは経験上ですが、しっかりと資金管理(余剰な分は定期預金などにし固定化させておくなど)出来ていない場合、いざという時が来る前に、運転資金として借り入れたお金を使いすぎてしまうことがあるからです。

そうすると本来の趣旨に反するとともに、毎月返済分が乗っかりますので、キャッシュフローにも影響がでます。また長期の運転資金は、会社の業況が悪化した場合、毎月の返済がボディーブローの様に会社を苦しめます。たとえ金融機関からそのアプローチがあっても、必要なければ断った方がいいでしょう。

会社の業況が悪い場合は、時間に余裕をもって相談すること

設備資金の場合

基本的には「良い」時と同じですが、設備投資の金額やキャッシュフローへの影響次第では、スペックを下げた金額を落とした見積りを要求されることがあります。

この考え方は難しく、企業側は「良くするために設備投資をするから、会社の業況は良くなる」と考えますが、金融機関側は「設備投資をしても良くなるかどうかは実際に投資してみないとわからないので、現状であまり問題ないレベルにしておきたい」というスタンスの違いがあります。

金融機関側もその設備自体の選定については素人ですので、スペックダウンについては、本当に会社にとってダウンした設備で要求を満たすのかどうかを検討し決定してください。そこで、本当はダウンしたものではダメなのであれば、その投資効果をキチンと説明し、理解を得られるように説得するほかないでしょう。その場合は時間がかかりますので、時間的に余裕をもって相談してください。

運転資金の場合

このケースがバンクミーティングの際に、一番気を使ってほしいです。

まず、時間的余裕をもって相談してください。たまに「明日必要だから」、といって泣き付く会社もあるようですが、そんなことをすると一気に信用はダウンします。金融機関側としては「資金繰りが全然把握できてない」と判断し、要注意の企業として見られます。

そして資金繰り表を必ず会社で作成してください。経験上、自分たちで資金繰り表を作成していない会社は、行き当たりばったりのイメージが強く、会社の内容を理解していないケースが多いです。このケースの場合はバンクミーティングで詳細に資金繰り状況を聞かれますので、答えられるようにするため自分たちで資金繰り表を作成して説明できるように備しておいて下さい。

また、業況が良い場合でも述べましたが、運転資金は短期にて対応するのが基本です。これは短期資金の場合、利息のみの支払いで毎月返済額は原則発生せず、キャッシュフローへの影響が軽微なためです。これは頭の中に入れておいて頂きたいです。

まとめ

以上、見て頂きましたが設備投資の方が運転資金よりはハードルが低いです。これは、設備自体を目で見て確認できますし、効果も計算しやすく(前回の「投資判断」で述べた内容)、更なる売上拡大や生産性向上などといった内容で、金融機関側も審査しやすいからです。

会社の状況や資金使途によって違いますが、最初にも述べたように対人とのやり取りになりますので、その点を注意してバンクミーティングに臨んで下さい。

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