第1回でリスケ(返済条件の変更)、第2回で期限の利益喪失についてお話ししました。
今回は、返せなくなることが決定的となり、もうリスケでしのぐこともできなくなった状態、つまり期限の利益喪失状態になったあとで、何が起こるのか?についての話しです。
融資が保証付きか?それとも保証なしで銀行から直接融資を受けたいわゆるプロパー融資か?で道が分かれます。
まずその1つ目、保証付き融資の場合に起こる代位弁済について、これから説明していきます。
目次
代位弁済とは?
信用保証協会が保証する融資のことを保証付き融資(通称・マル保(ホ)融資)といい、このマル保融資が返済できなくなると、最終的に信用保証協会が立替えて銀行融資を返済します。これが代位弁済です。
代位弁済後は借りている相手(債権者)が銀行から信用保証協会に変わりますが、もちろん借入がなくなるわけではありません。顧客(債務者)は信用保証協会と話し合って返済していくことになります。
代位弁済になるくらいなので、当然債務者は返済が苦しいでしょう。しかし信用保証協会は公的機関ですので、しっかりと話し合いをすれば少額の返済でも認めてくれます。例えば毎月1万円とか数千円の返済も実際にあるようです。要は何年かかっても必ず返済しますという意思表示があれば保証協会も冷たい対応はしないと言うことです。これは是非覚えておいてください。
しかし代位弁済になるというのは生やさしいことではなく、そのあと非常に大変なことがいくつも起きます。
それらは次のようなことで、以下一つずつ説明していきます。
代位弁済になると起きる大変なこと
- 代位弁済の記録は半永久的に消えない
- 事業資金融資は二度と借りることができない
- 代位弁済になったことはすぐにバレてしまう
代位弁済の記録は半永久的に消えない
代位弁済になると、その事実が銀行の加盟する信用情報機関であるKSC(全国銀行個人信用情報センター)に登録されます。代位弁済や自己破産などを異動情報といい、この異動情報が登録されることを俗に「ブラックリストに載る」と表現されます。
そしてここからが重要なポイントですが、代位弁済の記録は半永久的に消えません。というのも代位弁済になったと言う記録は金融機関と信用保証協会双方で半永久的に残るからです。個人信用情報に代位弁済の異動情報が登録されるのは5年間ですが、銀行と信用保証協会は決して忘れてはくれないのです。
事業資金融資は二度と借りることができない
KSCと連携している信用情報機関は2つ、CIC(クレジットカード、カードローン系)とJICC(消費者金融系)があります。信用情報機関は相互に提携し情報を共有していますので、代位弁済の異動情報が登録されると、当然ながらカードローンや消費者金融系の取引にも少なからず影響してきます。
具体的には、個人でカードローンを申込んだ場合、審査の過程で個人信用情報は上記3つの登録情報を調べます。(このことはカードローン申込書に明記されています。クレジットカードでも同様)その結果、代位弁済の記録があればカードローン審査はまず通らないでしょう。
そして言うまでもなく、銀行や信金から二度と事業資金融資を受けることはできないでしょう。代位弁済となった人には、もう一度保証協会保証付き融資はできませんし、もちろんプロパー融資は絶対に無理です。上記したように、代位弁済の記録は消えませんので、金融機関から融資を受けるのは(酷な言い方ですが)諦めたほうが現実的です。(なお代位弁済を受けたあとで、金融機関以外から事業資金を調達する方法については、完全な裏技となってしまいます)
代位弁済になったことはすぐにバレてしまう
代位弁済の前に、取引していた銀行の口座は全て凍結されてしまい、代位弁済する時強制的に解約され、融資金に充当されます。個人ならその銀行の全口座、法人の場合は会社口座と代表(保証人なので)個人口座全てが対象です。そしてそのあと新しく口座を作ることはまず無理なので、結果的に取引銀行を変えなくてはいけません。取引先には振込などで銀行変更を知らせることになりますが、この時点で先方にはバレてしまいます。取引銀行を変えることは滅多にあることではなく、まして急に変更するなど怪しいことは、やはり銀行と取引している先方も知っており、感づいてしまうのです。
また借入はなくなったわけではありませんので決算書に、今度は借入先が銀行ではなく信用保証協会と記載されることになります。建設業など一部の業界では決算書を公表する場合がありますので、やはりわかる人にはバレてしまい、会社の信用に影響してしまいます。
まとめ~代位弁済になったら、そう簡単にダメージは消えません!
サイトの記事では「代位弁済されても5年たてば大丈夫」とか「代位弁済されてもこの方法で」といった内容のものがありますが、どちらも個人的には疑問に感じる部分があります。実際はそれほど甘くないのです。
もちろん代位弁済は信用保証協会保証付き融資の特徴で、これがあるからこそ資産や信用が十分でない中小企業でも銀行から事業資金調達できるのですから、最大のメリットであることは事実です。
しかしこれまで説明してきたように、代位弁済となってしまった場合はいくつも困難なことが起こりますので、やはり無理な借入はせず慎重に考えることが必要だと思います。